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浮上 ページ45

この部屋に残ると言い出したノゼル。
元よりAの様子を見るつもりで来ているので、その意志は固い。
一方で、Aの婚約に対する気持ちを知っているフエゴレオンはこの状況をどうすればいいのか頭を悩ませた。


「本調子でないAにとって、他人が居れば気が休まらんのではないか?」

「長居はせん。」


ノゼルの事はよく知っている。
何かが起こるという事はないだろう。

弱りきっているAの事は気になるが、この場であの話を持ち出すほどノゼルは無粋では無いはずだ。
そう判断したフエゴレオンは、ノゼルを残して部屋を後にした。


「ノ、ノゼル団長は何故ここに…?」

「………。」


ふいっ。
無言で顔を逸らし、その問いを受け付けない。


(え。)


その反応にどうしていいかわからず焦る。
何か粗相があっただろうか、気を悪くしてしまうような事が。


「ノゼル団長…?」

「………。」


無言。
え、何これどうしたらいいの?黙る?
黙ってる相手に黙ったら沈黙しか生まれなくない?


「あの、何か気に触ったなら…。」


ジト。
ようやくこちらにくれた視線は、そんな音がよく似合う。


「…先程から、団長団長と……。」


重々しい口を開いて出たのは、そんな言葉だった。
それを聞いてハッとする。

ーー…今後は……団長、と呼んでくれるな。

そうだった。
いやさっきまでフエゴレオン団長も居たしね⁉
そんな状況で呼べないでしょう‼
…しかし今は部屋に2人。


「ノゼル、さん…。」


そう呼べば、ふんと満足気にようやく正面から視線を捉えられる。


「ソリドから熱を出したと聞いてな、仕事も落ち着いていたので顔を見に来ただけだ。」

「わざわざ来てくださったんですかっ⁉ 」

「……丁度時間が空いていただけだ。」


ーー私は、知っている。
団長の仕事は、そんなに即日偶然時間が空くようなものではない。
やり方にもよるだろうが、特に任務が集中するうちや金色、銀翼はゆったりした時間を持つことは少ない。

何でもないような行動のように見せて、決してそうではないのだ。
それも、わざわざ別の団まで足を運ぶなど。
夢にも思わなかった。


「ありがとう、ございます…。」


その事を噛み締めて、絞り出すように礼を言う。
さっきとは異なる意味の涙が溢れる。


「よく泣くな、枯れるぞ。」

「そしたらまた水浸しにします…。」

「やめておけ。」


冷静に言われ、思わず笑う。
沈んでいたはずの気持ちは完全に浮上していた。

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緋毬(プロフ) - まゆさん» 感想ありがとうございます!今の所いい勝負なのでまだどっちに転ぶかわかりませんね…(笑)私も書いてて楽しいです(*´艸`*) (2019年4月7日 17時) (レス) id: ef0ebcf362 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ(プロフ) - はじめまして!私はフエゴレオン様が大好きなので、ぜひそっちとまとまって欲しいです。あぁ……でも嫉妬するフエゴレオン様も見てみたい……(///∇///)ゞ (2019年4月7日 14時) (レス) id: 8902c85bfe (このIDを非表示/違反報告)
緋毬(プロフ) - ありがとうございますヾ(*´∇`*)ノ頑張ります! (2019年4月4日 17時) (レス) id: ef0ebcf362 (このIDを非表示/違反報告)
ジャンプ - 面白かったよ (2019年4月4日 16時) (レス) id: ea5f79410c (このIDを非表示/違反報告)
緋毬(プロフ) - ありがとうございます、今の所いい具合に進められているので、頑張って走ります(*`・ω・)ゞ (2019年4月4日 9時) (レス) id: ef0ebcf362 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:緋毬 | 作成日時:2019年3月31日 23時

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