【アルスマグナ】光のさきには…【九瓏ケント】

19話 ページ19

紫「大丈夫か？しんどいだろ？」

先生はわざわざ寮まで送ってくれるらしい。

私の鞄を持った先生と廊下を歩く。

『大丈夫です…』

授業中と言う事もあって、シンと静まり返っている校舎。

紫「体が炎症起こして、熱が出る可能性があるから無理するなって病院の先生も言ってただろ？」

『そうでしたね。』

紫「体も痛いだろ？」

『まあ…痛いです。』

正直、動くのもしんどいくらい痛い。

痛み止めを服用しても、体が痛くて眠れなかった。

紫「一人で平気か？なんならうちの使用人…」

『先生』

心配そうに話し続ける先生の言葉を遮る。

紫「何？」

『さっきから質問多いですね。』

紫「…ったくお前は」

想ったことを素直に言えば、少し呆れたような表情になる先生。

紫「心配なんだよ。」

『関わらないでくださいと言いました。』

紫「俺は嫌だって言った。」

『私なんかっ―ー』

紫「なんかとか言うな。」

今度は私が遮られる番。

紫「Aは自分の事卑下しすぎだ。」

靴を履き替えて昇降口から出ようとすれば、前を行く先生が振り返る。

そしてピンっと私のおでこをはじいた。

紫「もっと自分を大事にしなさい。」

『でもっーー』

紫「でもじゃない。」

再び寮へと足を進める先生を追いかけた。

紫「多分、奏もお前の事心配してるよ。」

『どうして泉君が…』

紫「昨日の状態、見られてるしな。勘が鋭いから。」

『彼が私を心配する理由がないです。』

紫「あるだろ。少なくとも、この間の事が原因で何かあったって事はうすうす勘付いてるよ。」

『だからって…彼には関係のない事ですよ。』

紫「いい奴なんだよ。そんな言い方してやるな。」

『先生も、泉君も…おせっかいです。』

今まで彼らみたいに気にかけてくれる人はいなかった。

積極的に私と関わろうとする人もいなかったし、いたとしてもいい意味での関りではなくて。

だから私もなるべく人と関わらないように生きてきた。

紫「おう、おせっかい上等。」

なのに、どうしてこの人達は突き放してもなお私に関わってくるんだろう。

『変な人。』

紫「お前もな。」

先生はそう言って優しく微笑んだ。

その笑顔を見たら、胸の奥がキュッとなった。

蓋をしたはずの感情が、ブクブクと膨れ上がって溢れ出るみたいだった。

『先生ッ…』

もうすぐ寮の部屋。

『たっ…助けてっ…』

先生の白衣をギュッと握って震える声で伝える。

振り返った先生は驚いていたけど、

紫「もちろんだ！」

20話→←18話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す