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ねぇ、どうして ページ23





家に着くころ、外は土砂降りになっていた。

急いで帰って良かったと思いながらも、
それより頭に浮かぶのは先輩のことで。


光先輩、さっきもおかしな様子だったけど、どうしたんだろう…

俺に何か言おうとしてたようにも見えたし、
薮さんが来てからはあたふたしてたし、大丈夫かな。

俺にも、薮さんにも隠してる何かがあるの?

薮さんはそれに気づいている?
そしたらまた……

不安を考えているとそれと比例するように、
いっそうひどくなる雨。



心配で、少しでも、

気付いたら、あの場所へ向かっていた。

雨の日に弱った子猫が逃げる場所。




______


ほら、やっぱりいた。

先輩に近づくとどこかへ行こうとする。
駆け寄って手首を掴んで。

「先輩、大丈夫ですか」

俺に背を向けたまま。

「なんの事」

「こんな雨の中どうしてここに?」

「言う事ない」

「そんなことない」

強引だと思いながらも引っ張ってこちらに振り向かせる。
それでも頭を下げてこっちを見てくれないけど。

「お願いだから。うちに来てくれませんか?」

「…い…や」

「なんで?」

「…」

「じゃあこの後は?家に帰るんですか、どうするんですか?」

「…」



「すみません!」

もうどうしようもなくて、先輩の手を無理矢理引いて家へ帰る。








うちのソファに座ることには慣れたみたい。
でも俯いてぎこちない様子。

俺もこの状況には大分慣れたから、先輩にそっと聞き出す。

「また逃げていたんですよね…?」

「うん」

「何が…あったんですか?」

「言えないもん」

「そうですか…」

何回も聞いても仕方ないし、それは先輩の判断だから追及はしない。



「どうしよう、帰れるかな…」

「朝まで居たって、俺はいいですよ」

「おおおれがむり!」

断言され、少し傷つく。
一緒の部屋に泊まったのに。

ソファの上で体育座りをして小さくなる先輩。

可哀想だけれど、お得意の可愛いポーズ。そんなつもりは全く無いんだろうけど。


そしてまたいつものように先輩のベルが鳴る。


♪♪♪♪♪♪

「もしもし…」

「光!外か?!」

「うん…」

「こんな雨なのに!今すぐ迎えに行くから!」

「うん…」

「どこにいる?」

「じゃあコンビニの前で待ってる」

「わかった!すぐ行くからな」

何故か電話をスピーカーにしてたから会話が全て聞こえた。
焦った薮さんの話声。

じゃ、帰るね、と少しだけこちらに視線を配って家を出る。





浮沈→←素敵な彼



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ゆんぴょ(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます!早めにスピンオフupしますね♪ (2019年8月17日 22時) (レス) id: 5a6b953178 (このIDを非表示/違反報告)
いちご - とってもおもしろかったです!スピンオフ待ってます! (2019年8月17日 21時) (レス) id: 8d82e99298 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆんぴょ | 作成日時:2019年6月7日 11時

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