ハッピーエンド16 ページ16
沖田さんは携帯を出し、山崎さんに電話した。
「攘夷浪士の後始末、今すぐ来て下せェ」
「今ですか!?」という叫び声が沖田さんのスマホから聞こえた。
何度か会話を交し連絡を切ると、私に向き直す。
ビクッと肩を震わせれば、彼はもっと冷たい目へと変わってしまった。
あっ…。私、なんで怯えて…。
「最後まで送りまさァ」
そう言うと、倒れた攘夷浪士を気にせずスタスタ歩きだしてしまった。
追いかけようとするが、なぜかその場から足が動かない。
目だけが沖田さんを追い、私が来ていないことに気づいた沖田さんが振り向いた。
「危険な仕事ってのはこういうことでさァ、すいやせん巻き込んじまって」
無感情、としか思えない真顔。
凍った目にドクッと心臓が鳴る。
「早く帰りやしょうよAさん、また面倒なのに出会っちまう前に」
アパートのドアの前。
そこまで送って貰ってしまった。
私はここにくるまでに、少し前のことを思い出していた。
初めて出会った時、彼氏と別れて泣きじゃくっていた私を送ったくれた時のこと。
その後、沖田さんに感謝を伝えるため真選組に何度も訪れたが、彼はいなかった。
甘味所に顔を出した彼にその事を伝え、なぜ居なかったのか問えば
_______危ねぇ仕事、してたんでさァ
…そう、そうやって前も言っていた。
ふと沖田さんの右手の甲を見れば、相手の返り血が付着していて。
鳥肌が全身を駆け巡った。
「あ、の…ありがとうございました…」
ペコリと頭を下げる私。
目が合わせられない。
「ゆっくり寝てくだせェ」
最後、そう悲しそうに笑った彼。
なんて声をかけていいか分からず、そのまま逃げるように扉を閉めてしまった。
玄関で立ちつくす。
柔らかい雰囲気で甘味所に来る彼じゃなかった。
からかって、「Aさん」と名前を呼んでくれる彼じゃなかった。
私の知らない、沖田さんだった。
「沖田、さん…」
影がある彼に、興味をひかれた。
いたずらっ子のように笑う彼を、好きになった。
けど…
橋の上で見た光景が頭から離れず、沖田さんに対する恐怖心が拭えない。
その場にしゃがみこみ、ツーッと額から流れた汗に戸惑う。
連絡、しなきゃ。
お礼の連絡。
今日はありがとうございましたって、また甘味所に来てくださいって。
そう頭では分かったいるのに。
持ったスマホが震えているのを見て、私はうつのをやめたのだった。
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お茶(プロフ) - アクヤさん» 素敵なコメントありがとうございます!頑張ります泣 (2019年11月9日 20時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
アクヤ(プロフ) - とても面白いです!これからも頑張ってください!応援してます! (2019年11月9日 17時) (レス) id: 64d635022a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年9月1日 1時