片思いエスプレッソ -Kei.I-

milk…3 ページ3

You side







慧｢で、なんの用？｣



A｢な、なんの用って…｣





先輩が勝手に私を引きずり込んだくせに！
なんて口が裂けても言えない。

一応相手は生徒会長。
遅刻常習犯の私とは違う。






慧｢えぇ、これを？先生が？｣



A｢…………そうです｣



慧｢雑用じゃん、こんなの｣






そんな目で私を見ないで。
私が悪いわけじゃないから……！







A｢それじゃあ、失礼しまー…………

離してください｣





伊野尾先輩に背を向け、扉に向かって1歩踏み出したと同時に再び手首を掴まれる。

ちらり、と先輩の顔を窺うとなんだか余裕そうにへらっと笑ってて少し腹が立つ。


あんまりいい噂は聞かない伊野尾先輩。
それなのにモテモテで頭が良くて、そんなのないよ。






慧｢君が噂の妹ちゃんだよね？大ちゃんの、｣






私の兄は、3年生の中で結構なお騒がせボーイらしくて、それでよく私も巻き込まれて一緒に怒られる。

"遊び人"だって噂の先輩に襲われそうになったのも、お兄ちゃんのせい。

遅刻さえしなければこんなことにはならなかったのになぁ、と思いながら窓の外の夕焼け空を見る。



｢おーい、聞こえてる？｣




伊野尾先輩の首をかしげて私の顔面の前でひらひら振られている手から顔を背けた。


どうせ家帰ったらあの笑顔で言われるんだろうなぁ、…『ごめんね？A』って。


そんなこと言われたら許すしかなくなるんだ。







慧｢えーっと、有岡ちゃん｣



A｢……やめてください｣



慧｢じゃあ教えてよ、お名前｣



A｢………………ミサキです｣







私は初めて、

生徒会長に嘘をついた。






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