この子、彼氏じゃなくて夫です【松野千冬】

しゅきぴ30 ページ31

『場地さぁぁん……』

「オマエなんでここにいるんだよ。帰れよ」

『えぇ辛辣つら』


違うクラスの場地さんの元へ向かうと、彼はしていたメガネをおでこに乗せて、めんどくさそうに答えた。

私の顔を見て、次に首を見て、さらに顔を見られる。
そして察したような顔をした後憐れむような目を向けられた。



『首痛い……』



所謂キスマ、というものを何個か首につけられた。
手持ちの鏡で首を映すと赤くなっている。



「千冬たまに動物だから気をつけろな」

『早く言ってください？！鎖骨まじで痛いんですけど、！？』



野生の千冬が飛び出した！！じゃないんだよ！！！
千冬くんの獣感しんどいけど、！！かわいくてかっこよすぎて！！



「つかお前といるとこっちの視線がキツいから早く帰れ。飼い主様も待ってんだろ」

『飼い主って……まぁ、帰りますけど』

「飼い主だろ。…千冬容赦ない噛み方するんだな……」



え？と聞き返すと、場地さんはなんでもないと教えてくれなかった。

なんなんだ。



「その噛み跡首輪っぽくてイイじゃん」

『首輪…？！』



たしかに、と思ってしまった。


左手の薬指も噛まれ、首も鎖骨も噛まれ、
いろんなところが噛み跡だらけだから、まるで千冬くんのモノって身体が示しているようで。



「オマエも付ければいんじゃね？千冬喜ぶと思うぞ」

『えぇ、…。付け方わかんない』

「んなこともわからないのか？」



中学留年してる人に言われたくない言葉ランキング第1位に輝くぐらいムカついたんだが。


場地さんはため息を一つ吐くと、私の腕を引っ張って。



「口を窄めて吸い付くんだよ」

『えっ、私の腕に実践するんですか』

「当たり前だろ」


に、と笑う場地さん。その目は何か楽しんでるようで。

何その目。と聞こうとしたところ、急に後ろから強い力で引っ張られた。



足のバランスを崩し倒れそうになったところを、誰かが受け止める。
まぁ、こんなことするのは1人しかいないわけで。



「場地さん何やってるんすか」




私の大好きな声。
後ろには千冬くんがいた。


千冬くんは後ろから私をぎゅっと抱きしめ場地さんをジト目で見ている。

そんな様子に場地さんはふ、と笑みを溢した。




「千冬後ろから見てるだけでつまんねぇから悪戯。流石にお前の彼女に手出さんわ」




場地さんはあっけらかんな表情で笑っている。
場地さんが掴んでた私の腕はいつの間にか離されていて、反対に千冬くんが腕を掴んでいた。

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