30 ページ30
ソワソワと買い物した物を冷蔵庫にしまいながら、まだ音のしない玄関モニターばかりに目がいってしまう。
30分ばかりした頃。ふいに響いたインターホンの音に、気にしていた割には飛び上がるほどビックリして胸を押さえた。
静まらない鼓動のままモニター越しに彼を確認して、「今開けるね」とオートロックを解除する。
部屋の中にいても落ち着かないのだからと、玄関の外に出て来るのを待った。
足音が聞こえて見れば、少しだけ早足に近付いてくる目黒くんの姿。
「わざわざ玄関前で待っててくれたんですか」
そう言って優しく微笑む。
「うん。なんか気になっちゃって。…急いで来てくれたの？」
ほんのり鼻先が赤くて、
「ふふ、ちょっと乱れてる」
前髪に手を伸ばしてそっと直すと、その先の真剣な視線と目が合って、私は気恥ずかしさで伸ばした手を彷徨わせて目を逸らした。
一旦、顔を下げてしまったら上げられなくて、胸元ら辺に視線を落としたまま。
「お願い事、聞いてくれますか」
上から静かに降ってくる声に、そっと目を上げる。
「私に出来る範囲なら、もちろんいいよ？」
珍しく目黒くんの表情が緊張している。
「頼りないかもしれないけど、一番に相談するの俺にしてくれませんか。仕事でもプライベートでも、なるべく俺を頼ってほしいです」
予想外の"お願い"にキョトンとしてしまった。
「え？」
「何かあった時に一番に思い浮かべる顔は、俺にしてほしいです」
その顔を見れば冗談で言われているわけではないのだと理解できる。
「そんな風に言ってくれてありがとう。…でも、どうしちゃったの？なんか、らしくない」
「俺じゃ頼りにならないですか」
「そんなこと…！
そんなこと、絶対にない。だけど……そのお願いの全部を叶えるのは、ちょっと、無理かな…」
目黒くんの顔が微かに歪む。
「なんで」
少し語気が強くなる。
「だって…」
「なんすか」
「……みっともないとこ、見られたくない」
「別に、」
「中身を認めてもらいたいから。いつだって、ちゃんとしてるなって…思ってもらいたい。目黒くん、優しいから。勘違いしちゃって、甘えそうになる自分が嫌なの」
こんなこと言っている自分が既に情けなくて。
全然年上の余裕なんて出せない。
俯くしかない視線の先で目黒くんの右手が動いたと思ったら、私の左手の指先をそっと掠め取られて、一つ小さく撫でられる。
反応する間もなく、次の瞬間には引き寄せられていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 743人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ありぃ(プロフ) - るるさん» コメントありがとうございます！嬉しい言葉ばかりで感激しております。。。しかももう３回も読んでくださっているだなんて、感謝しても足りないくらいです。いつでもここの黒さんが癒しますので、またいつでも来てくださいね。こちらこそありがとうございました！！ (2021年12月19日 1時) (
レス) id: 0d9038abf3 (このIDを非表示/違反報告)
るる - めちゃくちゃ好きなお話でした。描写も細やかで、すごくイメージが出来ましたし、黒さんのセリフも絶妙でした。すでに３回読み返して、噛み締めております。素敵な小説を、ありがとうございます！！ (2021年12月18日 22時) (レス) @page33 id: 5db6c5f68c (このIDを非表示/違反報告)
ありぃ(プロフ) - まあさん» 初コメントいただけて感動しております…！ありがとうございます。説明文過ぎるかなぁとか、キュン要素はあるのか？とか自問自答しながら書いておりますが、最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。お気遣いもありがとうございます！ (2021年12月11日 16時) (レス) id: 0d9038abf3 (このIDを非表示/違反報告)
まあ - 登場人物がそれぞれ魅力的で人間味があって、いつも楽しく読ませていただいています。毎日更新が楽しみでもあり、ありぃさんの負担になりませんように、と思っています。 (2021年12月11日 9時) (レス) @page27 id: c7a497417a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ありぃ | 作成日時：2021年11月24日 23時
