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彼の温かい体温に包み込まれると、私の心は一気に溶かされてしまう。バターぐらい脆かったように感じるぐらい。
「…暑いよ」
そう呟いても、ミンギュは私のことを離してくれない。前まではすぐに解放してくれたのに。
「ダメ」
私の顔に頬を寄せてきたミンギュが呟いた。そのせいで少しだけ腕の力が強くなる。今日はいつもと違う爽やかな香水の香りがした。
夏が近いから、香水を変えたのかな。そんな関係ないことを考えていると、ゆっくりとミンギュが離れる。
ふぅ、と彼が自らを落ち着かせるように息を吐いた後に私を立ち上がらせた。
何となく気まずくて、小っ恥ずかしくて…エレベーターの中で少し距離を取ってしまう。
オフィスに戻ると、数人しか残っておらず私たちが2人で戻ってくることを疑問に思う人も居なかったようだった。
30分も経てば、ほとんどの人が帰ってしまう。私たちを除いた最後の1人の先輩に戸締りを頼まれて、私が返事をする。
カタカタ、とキーボードの音だけがして妙に緊張してしまった。
機械の起動音がして驚いたが、それはミンギュが印刷したからで。彼がファイルで顔を隠して笑っているのが丸見えだ。
一足先に終えたミンギュが、報告書を課長のデスクに置いて戻ってくる。カバンを取り出して荷物を探している彼。
シュッ、と音がした後に、さっきの爽やかな香りが鼻腔を擽る。
「よし、準備完了」
ちらりとミンギュの方に視線を向けると、水色の香水が見えた。爽やかだけれど、奥深さもあって…どこか甘い。ミンギュのような、その香り。
「…帰る準備？お疲れ様」
「シンさん？いい加減俺も怒るよ？」
「ごめん」
彼が本気でムッとした様子で答えてくる。いつの間にか組まれた足は僅かに動いていて、彼のイラつきを見事に表現していた。
本当に先に帰ってもいいのに、と思いながらも私も完成した報告書を印刷する。
けれど、私が手早く帰る準備を済ませた頃にはミンギュは何ともない顔でスマホを見ていた。
いつもの彼の表情に内心安心しながら、いつもよりもいい香りのするミンギュに気持ちが浮つきそうになる。
2人で帰る時は必要以上に盛り上がる話題も、今日に限っては一言二言で終わってしまった。電車もそれなりのピークタイムで、人に押されて余裕が無い。
ただ、私が彼に気持ちを伝えてしまったという事実だけが変わらずにあることが、私の頭の中を占領していた。
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夏目(プロフ) - エルさん» エルさん、いつもいつも本当にありがとうございます(；；)一番試行錯誤した会社員ミンギュの現実感をお褒めいただけて胸がいっぱいです…！本当にいつも、私の伝えたいことや拘りを綺麗な文章にしてコメントを下さり、ありがとうございます！次作も頑張ります！ (2021年10月16日 21時) (
レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
エル(プロフ) - まずはお疲れさまでした！繊細な感情のゆっくりとしたステキな描写が大好きだったので寂しい気持ちもあり、幸せな2人を見て満足な気持ちもあり^_^会社員のミンギュになんか現実感満載で←これ凄い 更に楽しめました！ありがとうございました^_^新作楽しみにしてます！ (2021年10月16日 2時) (レス) id: 2a8565ccfe (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - あやちょるさん» あやちょる様、定期的にコメントしてくださりありがとうございました！そう言っていただけて、本当に嬉しいです。こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございました(；；)次回作も頑張ります！ (2021年10月15日 20時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - まるさん» コメントありがとうございます。最後まで楽しんでいただけてとても嬉しいです。私もまる様のコメントに安心して、心温まりました…次回作の応援までありがとうございます。これからも励んでまいります！ (2021年10月15日 20時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
あやちょる(プロフ) - 最後までお疲れさまでした。更新が毎回楽しみな作品でしたので、終わってしまうのが寂しいですが…素敵な時間をありがとうございました!新作も楽しみに待ってます! (2021年10月15日 16時) (レス) @page50 id: 702326c54a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏目
| 作成日時：2021年8月30日 7時
