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僅かな段差にずっこけたミンギュは、ケラケラと笑っている。
「ちょっと！大丈夫！？」
私が慌ててしゃがんでも笑ったままだ。
「怪我してない？あーもう、砂まみれ」
「へへへ、久しぶりに転んだ」
背中についた砂をはらってあげていると、その腕を掴まれた。
「俺も聞いた気がする。『怪我してない？』って」
その言葉にミンギュの方を向くと、しゃがんでいるからか、彼との距離をいつもよりも近く感じた。
「…そんなクールじゃなかった。ビックリした顔で『うわ！』て言ってたよ」
返して、また服に付いた砂をはらっているとミンギュが微笑む。頬にそえられた手のひらに、固まってしまう。
「まさか、転んだのが私って覚えてたの？」
「いや、全然？大会の話してて、転んじゃったから何かフラッシュバックした。こんなこともあったな〜って」
もうぼんやりとしたあの頃の記憶が、少しずつ鮮明になっていくような気がした。
ミンギュも同じなのかもしれない。ふわりと笑って、口を開く。
「高校の頃会ってたんだね。俺達」
小さく頷いて、私も笑みを浮かべる。
「あの時はありがとう」
彼が視線を少し落とした。
「…膝、痛かったでしょ。大会は大丈夫だった？」
「うん。ハードルで2位だった」
目をまん丸にしてこちらを見てくる。彼の表情に笑ってしまった。
「足速！」
やりとりをしながらようやく立ち上がる。ミンギュに手を差し伸べると、彼がすぐに私の手を掴んだ。けれど重たすぎて体重が持っていかれそうだ。
私までバランスを崩しかけて、慌ててミンギュが私を支える。
「ごめん、引っ張っちゃった」
「…うん」
背中に回された彼の手のひらに、小さく息を吐いて目を閉じる。
「え、怒った？」
ミンギュが慌てて聞いてくる。私は目を閉じたまま小さく首を横に振った。
「ただ、」
少し、躊躇った後に続ける。
「ミンギュを好きになりそうだから、一旦落ち着こうと思ったの」
何を言っているんだろう。自分でもそう思う。
顔を上げられずにいると、ミンギュの方に引き寄せられた。
「どう？好きになりそう？」
「いや、もう落ち着いた」
「……………」
それなのに、ミンギュは嬉しそうな顔のまま私を見つめている。
「…….何？」
「ん？可愛いなぁと思って。」
そう言うと、私の頬をむにむにと触ってくる。
「そうやって、俺の事考えてくれてるのも悩んでくれるのも、可愛い」
幸せそうに笑う彼に、勝てる気がしなくなってきた。
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夏目(プロフ) - エルさん» エルさん、いつもいつも本当にありがとうございます(；；)一番試行錯誤した会社員ミンギュの現実感をお褒めいただけて胸がいっぱいです…！本当にいつも、私の伝えたいことや拘りを綺麗な文章にしてコメントを下さり、ありがとうございます！次作も頑張ります！ (2021年10月16日 21時) (
レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
エル(プロフ) - まずはお疲れさまでした！繊細な感情のゆっくりとしたステキな描写が大好きだったので寂しい気持ちもあり、幸せな2人を見て満足な気持ちもあり^_^会社員のミンギュになんか現実感満載で←これ凄い 更に楽しめました！ありがとうございました^_^新作楽しみにしてます！ (2021年10月16日 2時) (レス) id: 2a8565ccfe (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - あやちょるさん» あやちょる様、定期的にコメントしてくださりありがとうございました！そう言っていただけて、本当に嬉しいです。こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございました(；；)次回作も頑張ります！ (2021年10月15日 20時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - まるさん» コメントありがとうございます。最後まで楽しんでいただけてとても嬉しいです。私もまる様のコメントに安心して、心温まりました…次回作の応援までありがとうございます。これからも励んでまいります！ (2021年10月15日 20時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
あやちょる(プロフ) - 最後までお疲れさまでした。更新が毎回楽しみな作品でしたので、終わってしまうのが寂しいですが…素敵な時間をありがとうございました!新作も楽しみに待ってます! (2021年10月15日 16時) (レス) @page50 id: 702326c54a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏目
| 作成日時：2021年8月30日 7時
