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まさか泣いてしまうとは思わなかった…泣きすぎたせいなのか帰り道になっても未だに呼吸が整わない。
ミンギュが心配そうに私のことを見つめる。
「ほんとに大丈夫？」
私の為に慌てている彼が新鮮で、そう聞いてくるのはもう5回目ぐらい。
「大丈夫…何でだろう、こんなの本当に初めてで」
「我慢してたのが出てきちゃったんだよ」
ゆっくりと歩く私に合わせて、のんびりと歩いてくれるミンギュ。
『好きだよ、Aのことが好き』
そう言われた瞬間、ずっと緊張状態だった糸が緩んだような感覚だった。ミンギュの言葉には、不思議な力がある気がする。
彼といると、周りや自分のことを少しずつ好きになれる。
「誰だって、不安になるし…怖いし、すぐに自分を受け止められないよ」
ミンギュが呟いた。うんうん、と頷くミンギュに心が軽くなる。
「ミンギュは優しいね」
そう返すと、ちょっと気に食わない顔をされる。
「優しいんじゃなくて、Aが好きなだけ」
それは、狡い。
ミンギュは照れくさそうに鼻を掻いて笑った。
電車に入ると、さっきのことが無かったかのようにいつも通りのミンギュが話しかけてくる。
企画書終わってよかったぁ、とか、下見行かなきゃね〜とか。
私も彼の優しさを素直に受け取って、いつも通りに返す。
「夜もだいぶ暑くなってきた……」
電車をおりると、ミンギュが煩わしそうにネクタイを緩めて呟いた。
「もう夏だなんて早いね」
マンションに着いたけれど、やはりミンギュが帰る様子は無くてオートロックを開けた。
エレベーターに乗り込むと、右手を握られた。彼はなんでもないかのように、エレベーターのモニターを見つめている。
会話をすることなく、エレベーターが到着して扉が開いた。
ぎゅっとミンギュが私の手を握る力を強くする。
「今日はありがとう」
ミンギュにそう言うと、彼は困ったような嬉しいような曖昧な表情をした。
「返事、いつでも待ってる」
「…わかった」
きちんと考えるね、と答えれば緊張した面持ちのミンギュが小さく頷く。その顔ちょっと可愛いかも。
「ミンギュ？」
私の手を離さないミンギュの様子を伺うと、まっすぐと目が合う。
「これからは、Aが好きだってことたくさんたくさん伝えるから。執拗いぐらい言うから！」
真剣な彼は、私よりも私に向き合ってくれていて。
「だからもう、自分の中の悲しさとか辛い気持ちを無視しちゃダメだよ」
次は、笑顔で答えられるようにね。
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夏目(プロフ) - エルさん» エルさん、いつもいつも本当にありがとうございます(；；)一番試行錯誤した会社員ミンギュの現実感をお褒めいただけて胸がいっぱいです…！本当にいつも、私の伝えたいことや拘りを綺麗な文章にしてコメントを下さり、ありがとうございます！次作も頑張ります！ (2021年10月16日 21時) (
レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
エル(プロフ) - まずはお疲れさまでした！繊細な感情のゆっくりとしたステキな描写が大好きだったので寂しい気持ちもあり、幸せな2人を見て満足な気持ちもあり^_^会社員のミンギュになんか現実感満載で←これ凄い 更に楽しめました！ありがとうございました^_^新作楽しみにしてます！ (2021年10月16日 2時) (レス) id: 2a8565ccfe (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - あやちょるさん» あやちょる様、定期的にコメントしてくださりありがとうございました！そう言っていただけて、本当に嬉しいです。こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございました(；；)次回作も頑張ります！ (2021年10月15日 20時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - まるさん» コメントありがとうございます。最後まで楽しんでいただけてとても嬉しいです。私もまる様のコメントに安心して、心温まりました…次回作の応援までありがとうございます。これからも励んでまいります！ (2021年10月15日 20時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
あやちょる(プロフ) - 最後までお疲れさまでした。更新が毎回楽しみな作品でしたので、終わってしまうのが寂しいですが…素敵な時間をありがとうございました!新作も楽しみに待ってます! (2021年10月15日 16時) (レス) @page50 id: 702326c54a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏目
| 作成日時：2021年8月30日 7時
