Call My Name ！ Ⅱ (ページ2)

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　俺達はマクトナルトを出て、歩く。
　帰り道は同じだから神奈川だから一緒に電車に乗って、いつも学校帰り一緒に歩いてる道を歩く。

　何も喋れなかった。朱センパイも無言だった。静かな夜の音、大きな月。…それらが胸のもやもやを増長させて、とうとう俺は口を開いた。

「………ボクシングは、好きですか？」

「……………！」

　前の仕返し。同じことを聞いてみた。朱センパイはなんて答えるのだろう。さっきの笑みは楽しげだった。けど、リングの上では大声はあげるけどにこりともしなかった。なら、どうして＿＿＿＿「好きとか嫌い、とかじゃない」…………？

＊＊＊

　黄瀬に、ボクシングは好きか、と聞かれた。突然の質問。けれど私も同じような質問をしたことを朧気ながら覚えてる。だから、答えることにした。

「好きとか嫌いとか、そういうのじゃない。確かに、好きだから減量もできるし日々強くなろうと努力してる…………つもり。

　でも、好きだけじゃ多分私はここまでできなかった」

　私は、月を見上げる。大きな満月。綺麗だ。手を伸ばした。

「私にとってボクシングは"生きる"ってこと。息をすることとかご飯食べるとかと一緒。息をすることに、ご飯食べることに好きだとは感じないだろう？

　私が私である為に、私が選んだ道。

　…………それは、好き嫌いじゃ、語れない。

　それにチャンピオンって大層な肩書きを持ってるとな、好き嫌いだけじゃなくなるんだ」

「好き嫌いだけじゃなくなる………？」

「そ。…………プロのリングは全てを賭けてる人が上がる。夢とか、希望とか、お金とか、名声とか…………………その人達に勝つ、ってことはその人達からそれらを"奪ってる"ってことになる。私はそれ背負うことにした」

　私は伸ばした手で拳を作る。

「この拳に、今まで負けた人の想いも夢も乗せて、その人達の分まで勝たなくちゃならねえ。もう私だけの好きじゃ、収まりつかないんだ。重い、拳なんだ。私の拳は。

　だから簡単にゃ、負けない。勝ち続ける義務が私にはある。

　………つまり、そういうことだ」

　私はくるり、と後ろを歩く黄瀬の方を見た。黄瀬は＿＿＿笑ってなかった。

「……………そんなの、辛いじゃないすか、なんでそんなに…………ボクシングに力を入れるんですか？」