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Ryuto side
「なんかごめんね、やらせちゃて」
モップ掛け終わって先生が新しく水をプールに入れながら俺に言った
プール独特の塩素の匂いがする
「いえいえ」
そう照れ隠しのように笑う
「絶対1人じゃ心折れてた」
そうクスって笑う先生は
なんだか
教壇にいるときよりも
手が届くような気がしてしまう錯覚に陥るから
慌てて言葉を探す
「ってかさ、なんでこれ、一人でやろうって思ったの？」
すると水面を見ていた先生が「ん？」ってポニーテールを揺らして振り向きながら
俺に言う
「少しはさ、神崎先生の役に立ちたくて」
え
よく考えたら「役に立ちたい」って言葉だけだったのに
いつもの俺だったらこんなことでこんがらがったりしないのに
この日だけは
この時だけは
この瞬間だけは
「もしかして神崎先生のこと好きなの？」
俺の突拍子もない一言に先生は驚いて目を丸くさせた
「え？いやいや、そうじゃなないって」
先生が
首を振るわ手も振るわ
驚いたような顔をして否定した
「ずっと迷惑かけてるから…さ？」
って笑う先生
自分でも驚くくらい慌てた
そして、急に早とちりした自分に恥ずかしくなった
自分が自分でなくなっていくようで…
プールのかさを見るめる先生の頬に
いつついたのかは分からないけれど汚れがついていて
手を伸ばした
伸ばしたくなった
プールの水がかさを増していくこの時間というのは
なぜこれほどまでにもじれったいものなのか
でも
先生の頬には
触れずに終わった
何も知らない先生の慌てた一声によって
「あ、ってか今何時？？？？」
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作者名：ポップコーン | 作成日時：2019年1月27日 16時
