【REBORN】最弱幹部は息を潜める (ページ26)

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目的25:貴方の名前ページ26

「……っふ、ふふふ……あははははは！」

私の大笑いに不服そうな表紙を浮かべる。

「ふふ……すみません。
確かにちゃんと名乗ってはいませんでしたね」

律儀な人だなぁと思いながら目尻に浮かんだ涙を拭い
呼吸を整え、彼を見据える。

「改めまして、雲仙Aと申します。以後、お見知り置きを」

10代目の守護者の肩書ももらったことだし、
お見知り置いてもらう必要はできたということにしておく。

「雲仙、A」
「はい」
「A」
「……ふふ。はい」

彼は噛み締める様に何回も名前を呼ぶ。
それに対し私も返事を返す。
何回も。何回も。

「…………流石に何回も呼ばれると照れるんですけど」

視線を彼から空へと移す。
目が覚めたときと変わらず雲一つない青空が広がっている。
頬を撫でる風と混ざって彼の声が届く。

「耳赤いけど」
「…………うっるさいですね。
それよりこれだけ連呼しておいて名前覚えてないとか言わせませんよ」

誰のせいだと思っているのか、とつい視線を彼に戻す。

「あぁ、覚えたよ」

と見たことのない柔らかい表情の彼がいた。
しかめ面やニヒルな笑みくらいしかできないのかと思っていた。
そんなに優しく笑うのか、貴方は。

「そ、れは…何より、です……」

視線を泳がせる。
ずっと見ていたいけど見ていられないジレンマ。
うー、とか、あー、とか変な声が出そうになる。
本当にこの人といると調子が狂う。

「A、敬語なし。僕のことも恭弥でいい」
「え゛っ」

想定外の言葉にまた違う変な声が出る。

「だって歳そんなに変わらないでしょ。
君だけ敬語っていうのも嫌だ」

こんな横暴な事案が罷り通っていいのだろうか。
……まぁいいかと思ってしまう私がいることに驚いた。

「恭弥……君」
「……………………………………………………うん」
「何で！貴方が！照れるの！！」

彼は口元を手で隠して横を向いたがその横顔も耳も真っ赤だった。
私も人のことをどこまで言えるかわからないけど。

「別に、照れてない」
「どの口が……」

少し可愛らしいなぁと思ってしまった。
そしてふと少し前には武器を向けていた相手だったことを思い出す。
そんな彼と名前で呼び合っている。
本当に久しぶりに生きていてよかったと思えた。

大空戦で目を閉じる前の黒い影は
死神ではなくて彼だったらいいな
なんて空想を浮かべた。