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 (まって、まってまって)

 いきなりはずるい。しかも、このタイミングは無いだろう。もっと、不意打ちじゃなくてさ。

 まだ冷静だった部分が、Aの笑顔によって殴り飛ばされた。脳内は混乱を極め、折角用意していたセリフがどこか遠くへと消えていく。

 だというのに、Aが更に追い討ちをかけてくる。

 五条の頬に触れている手が動き、親指が目尻を撫でた。
 ゆるゆると優しく撫でられ、更に溶けるような微笑みを向けられる。

「…もう、辛いことはない?悲しい事は、ない…?」

 ───あぁ、この子は何処までも…。

 労わるような手つきだった。
 昔の口調で、まるであの日あの時の彼女が問い掛けてくるような。
 
 辛くて悲しいのは、Aの方でしょ。
 
 五条は胸が苦しくなって、目の前が霞む。この子の前では冷静でいたかったのに。

 せめて、笑顔は絶やさないように口角を上げる。

「う、ん。…大丈夫だよ、だって…ぼく、さいきょーだもん」

 発した声は、震えていた。
 大切に、今度こそ間違えないようにしたかった。
 
 五条悟の答えに、Aは更に星屑の光を煌めかせる。

「…良かっ、た」

 何処までも優しい声だった。優しい笑顔だった。
 慈悲深い彼女に、五条は酷く安堵する。
 
 また今度話がしたいと彼女の方から持ち掛けられたので、五条は大変混乱しながらも表に出さないように頷く。

 泣き顔をこれ以上見られたくないと言われてしまい、大人しく部屋を後にした五条悟は。

「ッ〜〜…」

 そのまま、扉に背を預けてずるずるとへたり込んだ。

 今まで、恐怖を滲ませながら、殺されないようにもがいていた彼女。今だって怖かっただろうに、本音を話してくれた女の子。

 薄氷の上を歩いているような、不安定なAの、二度と叶わないだろうと思っていた微笑みを向けてくれた事に驚いて、そして、心の底から嬉しいと感じた。

 彼女の安心したような溶ける声を聞いて、五条の心にストンと何かが落ちる。

 だって、二度とあの笑顔を見れないと思っていたんだ。

 きっとこれは、同級生二人に知られれば罵詈雑言を浴びせられるに違いない。
 許される事では無いし、一番最低で最悪なことは、分かっていた。

 分かっていても、それでも。
 
 彼女の安心しきった微笑みが脳裏から離れない。


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(プロフ) - 早く続きが楽しみです!泣いちゃいました更新楽しみに待ってます。 (3月29日 23時) (レス) @page33 id: 53e14be78c (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 最高です!!泣きました (3月28日 5時) (レス) id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ - とても面白いです!更新楽しみに待ってます! (3月26日 21時) (レス) @page24 id: 4ea54ee5be (このIDを非表示/違反報告)
セネリオ - 面白いです!24時間が待ち切れない…!明日も楽しみにしております。 (3月23日 21時) (レス) id: f9511cc749 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なっしー | 作成日時:2024年3月21日 18時

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