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「……うん。…そうだね、ごめん、ごめんね」

 襟首を掴まれているのに。理不尽に感情をぶつけられているのに。
 五条悟は怒りもせずにただ言葉を受け入れている。
 顔を顰めて、泣くのを我慢するように、それが当たり前のように。

「優しくしないでよ…ッ、ぜんぶ、やめたのにっ!!やめ、たの…だから、やめてよ…っ、もう、大切が壊れるの、いやだよ…」

 信じて裏切られて。次こそ大丈夫って、また裏切られて。

 今更差し込んできた光を信じて、掴んで、また裏切られたらどうしよう。
 優しさに縋って、壊れてしまったらどうしよう。
 そうなったらきっと、私は本当にダメになる。

 心を空っぽにして、ただ最善の為だけに動いてきた。
 だから、彼らに何かを求めたら駄目なんだ。
 だから、何も望みたくない。動けなくなる。

 また繰り返してしまうしれないのに、立ち止まって心が折れてしまう。

「……壊れないよ」

 ひた、とAの目元に暖かい感触が伝わった。それが五条悟の指だと分かって、驚いて身体が固まる。

 ゆっくりと、五条がソファーに座ってAと同じ目線になる。また、骨張った手がAの頬に触れた。

 大切に、壊さないように、おそるおそる添えられた手は、不思議と怖くなかった。

「…壊れたり、しないよ」

 再度、あやす様に言葉が降ってくる。

「うそ、だ…そんなの、わかんない。だって、なんかいも…うらぎった…!」
「…うん」
「なんで…ッ」
「……うん」

 力なく五条悟の胸板を叩いても、優しい声は変わらない。

「…それでも、壊れないよ」

 なんで、そんな大切なものを見るような目をするんだろう。
 こんなに、泣いて、喚いて、理不尽なことを言っているのに。

 ───……本当に、信じていいの?

 ただただ、Aの言葉を受け止める五条悟は、今も優しい表情のまま。

 一瞬でも縋ってしまいたいと思ってしまった。
 ギュッと黒い服を握り締め、そして力なく離す。

 (嫌いに、なれたらいいのに)

 全部嫌いになれたら、どれだけ楽だったんだろう。
 だけどそれは、言えなかった。

 どうしたって、彼等のことを嫌いになんてなれないから。


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(プロフ) - 早く続きが楽しみです!泣いちゃいました更新楽しみに待ってます。 (3月29日 23時) (レス) @page33 id: 53e14be78c (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 最高です!!泣きました (3月28日 5時) (レス) id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ - とても面白いです!更新楽しみに待ってます! (3月26日 21時) (レス) @page24 id: 4ea54ee5be (このIDを非表示/違反報告)
セネリオ - 面白いです!24時間が待ち切れない…!明日も楽しみにしております。 (3月23日 21時) (レス) id: f9511cc749 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なっしー | 作成日時:2024年3月21日 18時

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