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(家入さんには、笑っていてほしいのに)
数千回。終わらない地獄を繰り返して、Aは最善のために行動してきた。
それは、家入達を利用したのも同然で。
彼女達と居るのが苦しくて、怖くて。本当の事も話せず、ただ上手になった笑顔を見せるのが申し訳なくて。
だから、逃げたのに。
こんな事なら、こんな、悲しそうに顔を歪ませてしまう彼女を見る位なら、夜蛾の言葉に乗らず逃げ続けていればよかった。
「どうして、置いて行ったの」
「…ぇ?」
ポロポロと、雨のように涙が降ってくる。
「何も聞いてない。ずっと連絡もよこさないで、ずっと、何処に…」
「ぁ…」
ただの同級生で、勝手にいなくなった自分の事をどうでもいいと思っていた。
でも、家入硝子の身体は震えていて、Aの事を心底大切そうに抱きしめている。
「ご、め…ごめん、なさ…」
優しくされると困るんだ。
どうしていいのか分からなくなる。否定してきたモノが溢れてきて、歯止めが効かなくなるから。
心配されて嬉しいなんて。
たった一人、最初から親切にしてくれた彼女に優しくされて、嬉しいなんて。
利用してきた自分が抱いていい感情じゃない。
それはあまりにも烏滸がましくて、身勝手だ。
だけど、どうしても涙が止まらなくて。
ふたりして身を寄せあってわんわんと泣いてしまった。
ずっとずっと、家入硝子はAが泣き止むまで頭を撫でてくれていた。
やっと落ち着いた頃には、家入の化粧は剥がれ落ちてしまって、Aも目元が赤くなっている。
居た堪れない気持ちに目線を泳がせれば、瞳をゆるりと細めた家入がまた優しくAの頬を撫でた。
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妙(プロフ) - 早く続きが楽しみです!泣いちゃいました更新楽しみに待ってます。 (3月29日 23時) (レス) @page33 id: 53e14be78c (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 最高です!!泣きました (3月28日 5時) (レス) id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ - とても面白いです!更新楽しみに待ってます! (3月26日 21時) (レス) @page24 id: 4ea54ee5be (このIDを非表示/違反報告)
セネリオ - 面白いです!24時間が待ち切れない…!明日も楽しみにしております。 (3月23日 21時) (レス) id: f9511cc749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なっしー | 作成日時:2024年3月21日 18時