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「───は、ははッ…」
その瞬間、夏油傑は全てを理解する。
羽柴Aがいつもなにかに怯えていた理由も、突然姿を消した理由も、何もかも。
呪詛師に堕ちた自分を、何度も救ってくれようとしたAを殺してきたこと。
何度も何度も、裏切ってしまったこと。
全部、思い出した。
そうだった。自分は非術師に絶望して人を殺したんだ。
優しいAに心が揺らがないように、身勝手な理由でその命を潰した。
親友もそうだ。共に呪詛師になったり、はたまた立場が逆転し五条悟が史上最悪の虐殺を行ったこともある。
頭の中に巡っていく、記憶の数々。
およそ数千回もの時間を繰り返し、Aはひとりで正解を探し求めていたのだ。
その過半数で、自分達が彼女の命を奪っている。
───あぁ。
怯えている理由が知りたいなんて、なんて馬鹿なことを考えていたのだろうか。
彼女は、自分達を通して五条悟と夏油傑に殺される未来を怖がっていたのだから。
ずっとずっと、傷つけていたのは自分達だった。
後に、いつまでも戻ってこない夏油傑を回収しに来た五条悟も、このノートを見て記憶を取り戻す事になる。
ふざけるな、と叫ぶ声は濡れていて。
自分達がしでかした罪の大きさを再認識することになった。
いつ殺意を向けてくるか分からない相手と過ごすなんて、どんな気持ちだったのだろうか。
自分を殺した相手が、次の時間軸で全て忘れて笑っている時、何を思っていたのだろうか。
何度も何度も裏切られた、その心境は。
───探さなければ。
最強たる五条悟と夏油傑が、3日吐き続け冷静になった頭で出した答えだった。
とにかく会わなければならないと思った。
きっと、いや、絶対にAは会いたくないだろうけれど。
謝りたかった。許して欲しいなんて大層なことは望まない。ただ、もう一度話がしたい。
道を外れかけた自分達を、数え切れない程救ってくれたAに、感謝を伝えたい。
会うことでなにかが変わる訳じゃない。
それでも、また姿を見て話をしたい。
沢山傷つけて、沢山間違えてしまったから。
今度はもう、間違いを繰り返したくない。
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妙(プロフ) - 早く続きが楽しみです!泣いちゃいました更新楽しみに待ってます。 (3月29日 23時) (レス) @page33 id: 53e14be78c (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 最高です!!泣きました (3月28日 5時) (レス) id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ - とても面白いです!更新楽しみに待ってます! (3月26日 21時) (レス) @page24 id: 4ea54ee5be (このIDを非表示/違反報告)
セネリオ - 面白いです!24時間が待ち切れない…!明日も楽しみにしております。 (3月23日 21時) (レス) id: f9511cc749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なっしー | 作成日時:2024年3月21日 18時