別離。再会。 ページ13
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「───本当に、行くんだな」
夜蛾が何度目か分からない問い掛けをするので、Aは苦笑いを作ってキャリーケースを掴んだ。
これが答えだと。
もう数えるのを諦めた。
ただ一つ、彼等を救う事だけを目標に何百、何千。
多分、それよりもっと。
5年。もう、十分だろう。
卒業前日まで彼等を救うために動いてきた。
だからこそ、分かる。
もう役目は終わりだと。
彼等が呪詛師に堕ちる要因は全て潰してきたのだから。
「もう、嫌なんです。本音を言うと、彼等の顔も見たくない」
最善を選んできたから、彼等がAを嫌うことは無い。ゴミを見る目を向けることは無い。
だからこそ怖い。いつ彼らがあの時のような目をするのか、いつ殺意を向けられ殺されてしまうのか。
染み付いたトラウマは簡単に消えてくれない。
だから、彼等を救ったその日には、何処か遠い場所へ逃げる事に決めていた。
呪術師を目指す者が、挫折してその道を諦めることはよくある事。
だから、今更姿を消したとしても彼等はなんとも思わないだろう。
硝子ちゃんには、悪い事をしたかもしれないけど。
彼女は最初の頃から優しくしてくれていたから、優しさを無碍にしてしまう罪悪感はある。
夜蛾はしばらく黙り込んで、『そうか』とだけ返した。
お世話になったから、彼にだけ新しい連絡先を渡して学校を後にする。
本当に困ったことがあったら、相談は乗りますと告げて。
そんな日は来ないといいけど。
───春が過ぎて、夏が過ぎた。
季節は巡る。怖いほど何も無い日々が過ぎていく。
まるであの地獄が本当に夢だったのかと疑う程に。
そんなはずない。だって今でもノートを見返せばあの日々がフラッシュバックする。
救ってきた代償に受けた傷跡も残っている。
全部、夢じゃない。現実だ。
死に戻りをすること無く日々が過ぎて、何年経っただろうか。Aの携帯に着信が鳴り響く。
「……」
懐かしい名前に指先が震えた。この番号を知っているのはあの人くらいだもの。
何コールか鳴り響いて、ようやく画面をスライドする。
懐かしい声に、胸がキュッと痛くなる。
『──久しぶりだな。羽柴』
「…はい。夜蛾先生」
少し老けたかな？声が低くなった気がする。
なんの用だろう。特別な事じゃなければ、わざわざ遠い昔の教え子に連絡なんてしないはず。
『羽柴、お前に頼みたい事がある』
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妙(プロフ) - 早く続きが楽しみです!泣いちゃいました更新楽しみに待ってます。 (3月29日 23時) (
レス) @page33 id: 53e14be78c (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 最高です！！泣きました (3月28日 5時) (レス) id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ - とても面白いです！更新楽しみに待ってます！ (3月26日 21時) (レス) @page24 id: 4ea54ee5be (このIDを非表示/違反報告)
セネリオ - 面白いです！２４時間が待ち切れない…！明日も楽しみにしております。 (3月23日 21時) (レス) id: f9511cc749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なっしー | 作成日時：2024年3月21日 18時
