失敗 ページ12
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「───本当に、残念だよ。君の事をこの手で殺さないといけないなんて。…本当に」
「ごめんな、A」
全て順調だったはずなのに。
あの日全て終わったはずなのに。
天内理子も救って、伏黒甚爾も死なずに彼の子供たちも助ける事ができた。
それなのに、どうして。
夏油傑と五条悟は離反してしまった。
月明かりしかない空の下、夏油傑がAの頬に触れる。
恐怖で動けないAは、ただ歯をガチガチと鳴らして震えるばかり。
「な、で…」
「…なんでだろうね。結局、私は彼等を許せないんだよ」
家族も全て殺して、理想の世界をつくる。
大切なものを全て壊してまで手にしたい大義なんて、Aには理解できない。
何を間違えた。何を失敗した。
失敗。失敗失敗失敗。
「なん、で、ねぇ。なんでよ。どうしたら、よかったの」
「……。…お前のそういうとこ、結構好きだったよ」
どうして、そんな優しい顔で笑うんだろう。
答えを聞けたら助けられるのに。
(助けられる、のに)
いつから、自分の為じゃなくて他人のために動こうとしたのだろうか。
ただ、死にたくなかった。それだけだったのに。
「おしえてよ、ねぇ。…げとう…くん、ごじょ、く…」
五条悟の服を掴んで縋り付く。ドッ、と衝撃が走ってお腹が熱くなった。
痛い。痛い痛い。熱い。
───寒い。
どうして、そんな顔で私を見つめるの。
痛くて悲しくて辛いのは、こっちなのに。
どうして。
「猿は殺す。…君は、優しいから…私の心が揺らがないように、殺す。ごめんね」
「俺たちの事、恨んでいーよ。その覚悟はしてるからさ」
泣きたくなるほど綺麗な笑顔だった。
全部諦めて、でも全部自分で選んだ本音を吐き出すような。
暗くなる意識に絶望しながら、Aは目を閉じる。
あと、何回繰り返せばこの地獄から抜け出せるのだろう。
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妙(プロフ) - 早く続きが楽しみです!泣いちゃいました更新楽しみに待ってます。 (3月29日 23時) (レス) @page33 id: 53e14be78c (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 最高です!!泣きました (3月28日 5時) (レス) id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ - とても面白いです!更新楽しみに待ってます! (3月26日 21時) (レス) @page24 id: 4ea54ee5be (このIDを非表示/違反報告)
セネリオ - 面白いです!24時間が待ち切れない…!明日も楽しみにしております。 (3月23日 21時) (レス) id: f9511cc749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なっしー | 作成日時:2024年3月21日 18時