１１ ページ42
ヤスくん、ごめんよ。
私には無理やってん。
どんよりとした気持ちで、
会社の外に出たら、
タクシーに乗り込む、
知世さんを見送ってる錦戸の姿が、
目に飛び込んできた。
雪はうっすらと積もってて、
また電車止まるんちゃうかなって、
ちょっと思ったりして。
７年前のあの日みたいに・・・
たまたま二人きりになれたら。
そんな都合良くいくわけないか。
車に乗り込みかけてた知世さんが、
私を見た。
ふふって笑った後に。
「あっ、錦戸くん。
忘れるとこだった」
とってつけたように言って、
明らかにチョコレートって分かる紙袋を、
錦戸に渡してん。
「あ、ありがとうございます」
錦戸が嬉しそうに受け取ってる。
チョコ、私にたからんかっても、
あんな美人からもらえたやん。
「また来月の本社会議の時ね」
鮮やかに微笑んで、
タクシーに乗り込んでく姿は、
颯爽としてて。
私なら絶対にもたつくわとか、
意味もなく比べちゃって、また自己嫌悪。
タクシーが走り去った。
ここで盗み見してたん、バレてしまう。
慌てて、明後日の方向に歩き出したら。
「駅そっちちゃうし。
それに約束あんのに勝手に帰んなや」
錦戸に呼び止められてしまった。
立ち止まったけど、振り返るのは無理。
もう泣きそうやし・・・
嫉妬してたんばれたら、かっこ悪いやん。
「なあ、聞こえてんの？」
錦戸が駆け寄って来てしまった。
私の前に回り込んで、顔、覗き込んでくる。
「じろじろ見んといてよ」
「これもセクハラなんの？」
「当たり前やん」
「雪降ってて寒いし、
俺ちょっと仕事残ってるし。
中、戻って、
事務所でお前のチョコ食べようや」
さっさと歩き出した錦戸の背中。
なんでこんなに大好きなん？
もう好きでおるん、嫌やのに。
「なんで・・・？」
いきなりそう呟いた私を、
錦戸が不思議そうな顔して振り返った。
コート着てへんし、
スーツの肩にも、
艶々の黒髪にも雪が舞い落ちて、
寒そう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 884人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
風 見 鶏 .(プロフ) - 「君がため」でfoolさんの描くお話に引き込まれ、中でも亮兄様のお話が大好きでした。今回のお話も錦戸さんにキュンキュン胸をときめかされ、読んでいてとっても幸せでした。素敵な作品をどうもありがとうございます。これからの作品も、楽しみにしております！ (2019年2月19日 8時) (
レス) id: e05307a668 (このIDを非表示/違反報告)
ぁぃ岡ちゃん(プロフ) - 完結おめでとうござます！そっかぁ、章ちゃん社長以来のしげかぁー！！ 亮ちゃんのプロポーズの仕方めっちゃきゅんってしました！！ お疲れ様でした！ 青春のすべても楽しみにしているのでこれからも頑張ってください！応援し続けてます！！♪ (2019年2月18日 21時) (レス) id: d8e946e0e3 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 完結、お疲れ様でした(*^^*) 重岡くんも亮ちゃんも可愛かったです、ありがとうございました♪ (2019年2月18日 21時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
ぁぃ岡ちゃん(プロフ) - やばぁーい！！もう！やばいです！！ 久しぶりに亮ちゃんですね！何ぶりだろう、神様かな(記憶力に問題あり) しげもりょーちゃんもドッキドキしました！ やっぱfoolさんのかく男の人の喋り方が好きです！これからも楽しみにしてます♪ (2019年2月16日 22時) (レス) id: 3d51891bca (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - 知世という名前、読み方は違いますが漢字が一緒でびっくりしました(°д°) (2019年2月16日 0時) (レス) id: bac4ce8d83 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：fool x他1人 | 作成日時：2019年1月26日 12時
