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その日の仕事終わり、
珍しくさっさと帰り支度をした彼をわざわざ駐車場まで追いかけて、
助手席のドアを勢いよく開けた。
驚いた顔をしたけど、
そんなに動揺した様子は見られない。
「おお、なしたん。家まで送ろか」
「からかわないでよ。もう二度とあんなことしないで」
「ファーストキスでもないのに大袈裟やな」
「なんでキスなんて、したの」
「とりあえずここ、目立つから、乗れば?」
数日前も乗った、高そうで甘い匂いのする車に乗り込んで、
安定した運転だな、と横顔を見る。
「んで?なんでキスしたの。だっけ」
「あ、そうだ。そう」
「忘れてたやろ。あほ」
「うるさい」
「別に、大した意味無いけど」
「は?」
「俺がキスしたら大体の女の子泣き止むから」
「は?!」
というかとりあえず発進したけどカーナビしてくれんと、
俺家知らん。またスーパーで降ろすことになるけど。って
そう言えばそうだった。
なんとなく、家は教えたくなかったから、
スーパーで降ろしてもらって買い物して帰ろう、と決めた。
「スーパーで降ろして」
「そのままAちゃんの家でご飯食べてくわ」
「ふざけんな」
「お礼やって、」
「チャラになったでしょ」
「それはそれで俺がお礼するから」
強引だからめんどくさくなって、
大したもの作れないよ、と前置きして家に招くことにした。
あ、いや待って危険かな。
さっきキスされたし。
「ねえ、やっぱ帰ってよ」
「なんでなん。笑 さっきいいって言ったやん」
「なんか、危険な予感が」
「俺Aちゃんに手出すほど女に困ってないってば」
「キスしたじゃん」
「キスぐらいでしつこいな」
キスくらいで、って言葉にカチンときて、
思わず心の声が口から溢れ出てしまった。
「キスくらいでって、好きでもない人とキスして何が楽しいの?」
「べつに」
「愛のないキスも、行為も、虚しいだけじゃん」
「わかったような口聞くなって」
「は?」
「愛とか知らんし」
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涼杜兄妹(プロフ) - 岸くんの小説初読みがとても素晴らしい作品で、2人だけの結婚式のところめっちゃ泣きました。今後平野くんでどうなるのか楽しみです!応援しています! (2019年4月26日 23時) (レス) id: 400e48a6ce (このIDを非表示/違反報告)
しゅしゅ(プロフ) - はじめまして。読んでいると自分がこの作品の中に入り込んでいくようなもので、岸さんの設定もあり、何度か涙してしまう部分がありました。平野さんとの本編がとても楽しみです。ひとつのドラマのように見れたこの作品がとても好きです。 (2019年4月6日 5時) (レス) id: e8afa57bf5 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 初めまして。楽しく読ませていただきました。本編があるなんて楽しみです。 (2019年4月1日 2時) (レス) id: 123949a422 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - めっちゃめっちゃ本編楽しみです!私は岸くんが一番すきなので、岸くんの話を読めてホントに良かったです!更新頑張って下さい♪心から応援してます!!! (2019年3月31日 23時) (レス) id: 36d39b543c (このIDを非表示/違反報告)
光彩 - 初めまして。岸くん押しなので気になり読ませていただきました。すごく面白かったです。岸くんが消えてしまってさみしいですが、彼の願い通りヒロインと紫耀くんが幸せになれたら嬉しいです。本編も楽しみにしています。 (2019年3月30日 20時) (レス) id: 44ed791076 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ベリナ | 作成日時:2019年3月4日 18時