さよなら、初恋【岸優太】

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「おかえり」








すっかり私の職場では姿を見せなくなった優太が、


家で出迎えてくれる。



今の時間は23時間近。




あと小一時間で優太がいなくなってしまう。









「ずいぶん熱中してたね」


「ごめん、遅くなって」


「ううん、いいよ全然！」


「.......優太〜〜〜」









思いっきりソファに座ってる優太に

ダイブしてみたけど、やっぱり触れられない。









「まあ、あと1時間だけど」


「そういうこと言わないでよ」


「A、案外平気そうでよかった」


「何言ってんの」


「だって前までのAなら絶対今日仕事休んでたじゃん」









一理あるな、と思いつつも、


別に、平気なんてことは全くない。









「んまあ、言いたいこともう全部言ってあるからな〜」


「そっか」


「なんか、あっさりしすぎじゃね？」


「涙も出てこないわ」


「とか言ってAは俺が消えたら泣くからね絶対！」


「うるさ」









優太が、あまりにも普通すぎて、


私も普通にするしかなかった。









「俺ね、色々考えたんだけど、」


「うん」


「Aが結婚するまでは、傍にいるわ。だから見えてなくても安心してよ」


「ほんとに？」


「うん、だからちゃんと幸せになって、俺のこと安心させてね」









約束しろ！ってニコニコ笑ってるから、


やだ！なんて言える訳もなく。



わかったって、頷いた。









「約束だからな、俺の最後のお願いなんだから」


「わかったってば」


「ほんとか？」


「幸せになるよ」


「うん、それでいい」








無情にも時が止まる、なんてことは無く。


あの日のように、突然もやだけど。




タイムリミットが迫ってくるこの感覚も、


なかなかしんどい。









「A〜〜〜、そんな顔すんなよ、ブスになるぞ」


「ブスでもいいもん」


「冗談じゃん！本気にすんなって！」


「うるさい」


「可愛いから！可愛いから笑ってなさい！」









最後まで、ムードも何も無いなあ、って


それが私たちらしいのかな、って





12時に刻一刻と近づいてる時計の針を軽く睨んだ。









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