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「A〜〜〜」
「なに、ここ」
「ここね、夢の中。あんね、俺Aとやりたかったことがあって」
白い建物、どこ、なんて聞かなくてもわかる。
私の職場のチャペル。
「結婚式ごっこしませんか」
「ごっこ?」
「そう、お客さんも神父さんも誰もいないし指輪もないけど、でもドレスだけは着せてやるから」
そう言われて、チャペルに足を踏み入れると、
その瞬間、純白のウェディングドレスを身にまとった自分がいて。
その隣にはばっちりタキシードでキメてる優太がいた。
「Aさん、お手をどうぞ」
そう言って、腕を組ませてエスコートしてくれる。
真紅のバージンロードをふたりで歩いて、
壇上に上がる。
「えーっと、えっと、なんだっけ。あ、あれだ、誓うやつ!」
「何その適当な感じ」
「えーっと、ずっと好きだよ?あ、指輪もねーし、もうキスしてい?」
「そんな適当な誓いある?!」
「永遠の愛を誓うのは俺だけでいーからね。まあ、あの、好きっす。はい」
「なんだそれ...」
その後も、
あれ、ベールが上手く捲れない!とか
待って、キスしたらAのリップいっぱい唇についた!とか、
ギャーギャーたくさん1人で優太が騒いで、
それを私が呆れてみてるっていう、
不思議な結婚式をあげた。
「えー、せっかくだから、もう1回ちゅーしとく?」
「なにそれ、笑」
「だってさっきはかっこよくキマんなかったからさ」
「何回やっても無理じゃない?」
「そんなことねーし!」
そんなこんなで何度も何度も、
優太に唇を奪われ、
その感触が胸にじんわり広がって、
すっごく幸せだった。
「ん。いい思い出できた。Aのドレス見れたし」
「私も、いい思い出」
「まあ、Aは夢だからすぐ忘れちゃうけどね」
「忘れないもん!」
チャペルを後にすると、あっというまに花嫁姿ではなくなって、
見慣れた帰り道をふたりで歩く。
「誰もいないね」
「うん。これ幻だから」
「そっか」
偽物でも、適当でも、
優太と結婚式、あげれて、
ただただ幸せだった。
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涼杜兄妹(プロフ) - 岸くんの小説初読みがとても素晴らしい作品で、2人だけの結婚式のところめっちゃ泣きました。今後平野くんでどうなるのか楽しみです!応援しています! (2019年4月26日 23時) (レス) id: 400e48a6ce (このIDを非表示/違反報告)
しゅしゅ(プロフ) - はじめまして。読んでいると自分がこの作品の中に入り込んでいくようなもので、岸さんの設定もあり、何度か涙してしまう部分がありました。平野さんとの本編がとても楽しみです。ひとつのドラマのように見れたこの作品がとても好きです。 (2019年4月6日 5時) (レス) id: e8afa57bf5 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 初めまして。楽しく読ませていただきました。本編があるなんて楽しみです。 (2019年4月1日 2時) (レス) id: 123949a422 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - めっちゃめっちゃ本編楽しみです!私は岸くんが一番すきなので、岸くんの話を読めてホントに良かったです!更新頑張って下さい♪心から応援してます!!! (2019年3月31日 23時) (レス) id: 36d39b543c (このIDを非表示/違反報告)
光彩 - 初めまして。岸くん押しなので気になり読ませていただきました。すごく面白かったです。岸くんが消えてしまってさみしいですが、彼の願い通りヒロインと紫耀くんが幸せになれたら嬉しいです。本編も楽しみにしています。 (2019年3月30日 20時) (レス) id: 44ed791076 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ベリナ | 作成日時:2019年3月4日 18時