psycho [TOP4] (ページ26)

今日:6 hit、昨日:49 hit、合計:114,374 hit

緑の部屋ページ26

牛沢さんの妹さんの話を聞いて、自分の兄弟のことを思い出した。

研究施設で実験体となった私たちのようなものはみんなまとめて兄弟として扱われた。

だから私には実験体の数、だから十数人の兄弟がいる。

みんな無事に生きてくれてたらいいなといまはそう願うことしかできない。

「A、手止まってんぞ。」

「あ、すいません。」

「まあ、そりゃこんだけやれば疲れるか。

今日はこんくらいにしとこうぜ。」

「はい。」

私のために用意してくれたらしい紅茶を一口飲む。

ふう、と息を吐いてリラックスしていると牛沢さんが立ちあがった。

どこに行くんだろうと思っていると、どうやら私の考えていることが分かったらしい。

「ちょっと着いて来いよ。」

特に断る理由もない私は大人しく従うことにした。

階段を上がっていく牛沢さん。

着いたのは彼の部屋の前で、私は初めて中に通された。

部屋いっぱいに広がる実験道具。

謎の液体が入った物とか、変な機械とか知らないものがたくさんある。

その中には施設で見たことがあるものもいくつか見つけた。

「妹のことがあってから血が嫌いで、じゃあ俺ができることはって考えたときにこれしかなかったんだ。

頭使うことは嫌いだけど、昔から科学だけは得意だったから。」

あんま触んなよ、危ねーからと声を掛けてくれる牛沢さん。

実験道具に当たらないように気を付けて奥のソファに座った。

そこから牛沢さんは古い本を取り出してそれを私の前に置く。

「見てみ？」

「はい。」

開けると、さっきのペンダントの中に入っていた少女の写真。

その横にはいまより少し若いくらいの牛沢さんも笑ってた。

「こうやってアルバムに全部残してんだ。」

「笑顔の素敵な妹さんですね。」

「だろぉ？こんときはさ、」

アルバムのページを一枚めくる度に、思い出の話をしてくれる牛沢さんの顔はちゃんとお兄さんの顔をしていて私も兄弟が恋しくなった。