24話 ページ26
あれこれと考えているうちに、あっという間に明日はやって来た。
約束の時間、2年ぶりのAの家。
相変わらずでかいな...
チャイムを押そうとする手が震える。
...本当に押していいのかな。
Aが作曲を止めると言ったとき、強い言葉で言及して、それでも答えをくれないAにしびれを切らして突き放した。
きっと何か理由があったんだろう。
Aがボカロや作曲が好きなことは知っている。ましてや理由もなく気まぐれで止めるだなんて口にする人ではない。
それでも答えを求めて、子供のように駄々をこねたのは紛れも無い俺だ。
きっと沢山傷付けた。
チャイムを押す勇気が持てずにいると、ガチャリと扉が開く。
玄関先でもだついていたことを知られたのか、訝しげな表情をしたAが扉を支えるように立っていた。
『え?何してるの?入りなよ。』
そう言って中に入るよう促すAの声は、怒るでもなく呆れるでもなくいたって普通。まるで昨日も遊んでいたかのようなフランクさだった。
わっ....2年ぶりのAだ。
かっこいい。
しばらく目をしばたたかせていたが、ふと我に帰り慌てて玄関の扉をくぐる。
「おっお邪魔します...」
靴を脱ぐのに手間取っているうちにAは部屋の中へと入っていってしまう
その背を追うようにして俺は、久しぶりに歩く廊下をスタスタと進む。
2年前まで毎週のように遊びにきていた家だ、お陰で間取りまですっかり覚えてしまった。
それにしても、最初に会話をしたっきりずっと無言で居心地が悪い。
何か言わなければ、何か....
「今日は何の用?」
いや...ちょっと切り込みすぎだしまだ心の準備ができてない。
「元気してた?」
見るからに元気そうだし、他の歌い手のツイッターで話が出てたからそれは知ってる...
「新曲よかったよ!」
....は今じゃないし。
何と声をかけていいか考えあぐねいているうちに、いつの間にか広いリビングに辿り着いてしまっていた。
相変わらずAは何も言わないどころか、一度もこちらを見ようとしない。
ふと、
ずっと考えてはいたけれど、それを認めたくなくて見て見ぬ振りをしていた一つの考えが頭に浮かんだ。
もしかしたらAはもう、
俺なんかのこと好きじゃ無いかもしれない。
そんな最悪の考えがグルグルと回り、頭の中を占領する。
一度浮かんでしまえばもうそれは決して消えることなく俺の思考を埋める。
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ゆきうさぎ - コメント失礼します。作者様の負担になるようでしたら話は別ですが、僕は皆でハッピーエンドが良いと思います。 (2020年9月20日 1時) (レス) id: f935ff1209 (このIDを非表示/違反報告)
あお - 個人的にはhappyendが好きなのでhappyendが読みたいです…! (2020年6月15日 18時) (レス) id: 57a51dc74d (このIDを非表示/違反報告)
匿名主(´・∀・`) - 初めまして、失礼します。個人的にはhappy endが良いんですが…一回何らかの endで完結させてしまって、その後に場面分岐的な終わり方にすれば良いのではないか。と考えております。作者様に負担が掛かってしまいますし、上からで申し訳ないんですが…考えて頂ければと (2020年6月13日 21時) (レス) id: 610e5b95f1 (このIDを非表示/違反報告)
ペン - 初めまして、今日は。 秘かに読まさせて頂いてます。今更なのですが、 happyendが良いと思ってます。体調に 気を付けて更新頑張って下さい。 (2018年6月24日 11時) (携帯から) (レス) id: c5e8935b6a (このIDを非表示/違反報告)
にょむさん - 個人的にはHappy Endがいいです! (2018年6月17日 22時) (レス) id: c18b2f6fe2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紺碧 | 作成日時:2017年12月3日 21時