【男主】伝説のボカロPは歌い手に愛され執着されています【歌い手】

1話 ページ3

〜そらるside〜



今日投稿する予定の曲の最終確認を終え、一息つこうとコーヒーを入れた。
カップを片手にパソコンの前に座る。

何気なくニコ動を開くと、ページの先頭にあるニュース欄に見慣れた名前があった。


俺の大好きな人の名前。

「A」


Aがどうした？

かつてはAが新曲を投稿する度ちょっとしたニュースになっていたが、活動休止して2年の月日が経った今、Aの名前を見ることは無くなっていた。


慌ててリンクを踏むと飛び込んで来た【伝説のボカロPA復活！】の文字。


「は？」

何それ聞いてないけど。

混乱する頭で意味もわからないまま動画を開く。





ヘッダーに現れた絵は紛れもなくAのもの。


再生画面に移りイントロが流れ始めると、俺の中にあった全ての疑問が吹っ飛んだ

ドンっと突き上げるような衝撃が俺を襲う。







あぁ、これだ。


この音を聞いて俺は歌い手になりたいと思ったんだ。

生まれて初めて歌ったのも、初めて投稿したのもAの曲だった。




スマホからまふまふからの着信を知らせる音楽が流れる。
多分同じ動画を見て居るのだろう。


電話を取ることもできず、入れたコーヒーが傍らで冷めていくのをぼんやり感じた。




俺はAの曲を聴きながら、とめどなく溢れる涙を拭うことすらできなかった。

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