9話 ページ11
開店直後のアニメイトに足を踏み入れると、入ってすぐの棚の前には制服を着た高校生らしき女の子が2人。
「ねえねえ!見て!Aさんのアルバム!!新曲聴いた!?」
「聴いたー!本当に神すぎる。Aさんの曲、昔ずっと聴いてたな〜」
「私は今も聞いてるもんねー!」
「何その自慢w」
「ごめんごめんwリリースされたこのアルバム、新曲5曲も入ってるらしいよ!しかも...Aさんのセルフカバー付き!ミクとのデュエットだって〜!」
「えっ...買うしかないじゃん!
お財布にお金入ってたっけなー!?」
「えーじゃあ私も買う!!」
女の子たちがアルバムを持ちレジに向かう背中を見送った後、俺は彼女たちの居た棚を見上げる。
お店に入ってすぐ目に付く、一番目立つところに作られた棚にずらりと並んだAのアルバム。
でかでかと書かれたポップにはこう書かれていた。
【伝説のボカロP二年間の沈黙を破り、進化を遂げてここに復活!この音楽を聞き逃すな!!】
ポップの横にはAの描いた曲のイラスト。
「綺麗」
ぽろっと言葉が口からこぼれ落ちた。
Aは作詞も作曲もムービーでさえも自ら作り出す。
『俺が作り出した世界で俺が作った歌を歌ってもらうことに意味がある。誰にもその役目を譲りたくないんだ。』
前にそう教えてもらったのを思い出した。
繊細で、でも力強いタッチで描かれた美しい絵。
その絵はAの曲にこれ以上ない程に似合っている。
「会いたい...」
Aに今すぐに会いたい。
俺の名前を呼んで
『天月』
Aに名前を呼ばれるのが一番嬉しい。
でも、それは今叶わない。
2年前の活動休止騒動の時、俺らは激しい喧嘩をした。
Aは活動休止の理由を俺らにもファンにも、誰にも語らなかった。
「それって裏切りなんじゃないの?」
『わかってる、でも今は言えないんだ。』
「ああそうかよ!じゃあ勝手にしてくれ!」
そう言って啖呵を切った。
他の歌い手たちは、Aが活動を休止している間もプライベートで関わりを持って居たようだが、俺はこの二年間Aと連絡を取ることは一切なかった。
あの時のことを後悔したことはない。
あんなにもファンに、歌い手に愛されて居たのにやめる理由を1つも話さないだなんて許せなかった。
けれど未練はあったし、Aが好きなことは二年間変わることはなかった。
「なぁ、教えてくれよA」
零した言葉はきっと届かない。
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ゆきうさぎ - コメント失礼します。作者様の負担になるようでしたら話は別ですが、僕は皆でハッピーエンドが良いと思います。 (2020年9月20日 1時) (レス) id: f935ff1209 (このIDを非表示/違反報告)
あお - 個人的にはhappyendが好きなのでhappyendが読みたいです…! (2020年6月15日 18時) (レス) id: 57a51dc74d (このIDを非表示/違反報告)
匿名主(´・∀・`) - 初めまして、失礼します。個人的にはhappy endが良いんですが…一回何らかの endで完結させてしまって、その後に場面分岐的な終わり方にすれば良いのではないか。と考えております。作者様に負担が掛かってしまいますし、上からで申し訳ないんですが…考えて頂ければと (2020年6月13日 21時) (レス) id: 610e5b95f1 (このIDを非表示/違反報告)
ペン - 初めまして、今日は。 秘かに読まさせて頂いてます。今更なのですが、 happyendが良いと思ってます。体調に 気を付けて更新頑張って下さい。 (2018年6月24日 11時) (携帯から) (レス) id: c5e8935b6a (このIDを非表示/違反報告)
にょむさん - 個人的にはHappy Endがいいです! (2018年6月17日 22時) (レス) id: c18b2f6fe2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紺碧 | 作成日時:2017年12月3日 21時