15話 ページ16
「A、傷さらしたままは良くねえ。これ巻いとけ。」
前を歩くAを呼び止め、応急セットから取り出した清潔なタオルをふわりと腕に巻きつける。
『ありがとう、あーえっと名前なんだっけ？』
申し訳なさそうに首を傾げながら聞いてくるAに、以前笑って俺に手を伸ばしてくれた姿が重なって見えた。
本当に何も覚えていないんだな、と思い出し少し堪える。
「焦凍だ、轟焦凍。」
『とどろき、』
「焦凍って呼んでくれ。」
『え？えっと、しょうと？
...タオル、ありがとう』
伏し目がちなAの横顔を見つめながら並んで歩く。
「さっきの、痛いのに慣れてるってどういうことだ。
痛み、かんじねえのか？」
痛覚は生きていくうちで必要不可欠な感覚だ。
痛みを感じるから自分の限界を知ることができる。
それが分からなければ、怪我に気づかず動き続け命を失うことにも繋がりかねない。ヒーローならばそれは尚更だ。
『いや、そういう訳じゃなくて』
Aは、どこかバツが悪そうに俯いたまま答える。
『小さい時からずっと、どっかしら痛いのが当たり前だったから』
だから痛いのには慣れてる。
そう言ったAはひどく寂しげだった。
『しょうとはさ、俺が怖くないの？』
初めてきちんと目があった気がした。
怯えるような瞳だった。
俺はこれを知っている。
誰かに嫌われ傷つけられることを恐れている、幼い頃の俺と同じ目だ。
「怖くない」
はっきりと告げると、Aの瞳が驚いたように見開かれる。
『っだって、得体の知れない奴が同じ空間にいるんだよ。
ヴィランに誘拐されてたって、不気味だろ？』
「怖くない。
俺はお前に救われたから。」
『え？俺なんかしたっけ』
「Aがくれた言葉で俺は前に進めた。
大事な人と正面切ってぶつかる勇気をお前にもらったんだ。」
『ごめん...俺それよく覚えてない。』
「覚えてなくていい。ただ、Aが俺を救った、その事実だけは覚えといてくれ。」
『...なんかわかんないけど、
しょうとが救われたなら良かったな。』
儚げに笑ったAは、そう言ってまた俯いてしまった。
なぁA。
お前は何を恐れているんだ？
お前が俺を救ってくれたように、
今度は俺が
Aを救いたいんだ。
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ウタ - 次の展開がどうなるのか楽しみです (2018年7月18日 22時) (
レス) id: 5d727cd1f1 (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - めっちゃいい話だと思います！！更新楽しみにしてます！！ (2018年7月16日 8時) (レス) id: 83591e10d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ストーリー展開がとても好みだし、文章が、言葉ひとつひとつが綺麗で好きです。本当に素敵な作品ですね！ (2018年6月24日 21時) (レス) id: bc7a356a9c (このIDを非表示/違反報告)
こパンダ - とてもたのしみにしてます。頑張ってください！ (2018年6月22日 17時) (レス) id: 7360b2bbb8 (このIDを非表示/違反報告)
甘露蜂蜜(プロフ) - あああこれは夢主くん弔くんのこと思い出してほしいやつです…！こういうめっちゃシリアス系好きなので展開がすごく楽しみです。頑張ってください。 (2018年6月17日 23時) (レス) id: 817d133cd9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紺碧 | 作成日時：2017年11月13日 21時
