魔 性 と 恋 傀 儡 【 雪男 】

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Aと関係を持つようになって、確かに日々に明るさが戻ってきていた。ただ同時に、妹に対しての罪悪感が募っているのも、また事実だった




『今日は、お鍋だよ？』



俺に微笑みかけるAは、良過ぎるほど良妻に値する。苦手な料理も時間を掛けて美味い料理を作ってくれるし、精神的に崩れていた健康面、美容についても気にかけてくれている。まぁそれは彼女の仕事が美容部員だからこそだろうけど……ただ、金のやりくりは苦手なようで、時々財布と睨めっこしているのが可愛い



「うん！まーじで美味い！なんか……懐かしい味がする。さっすがA」


『……ほんと！？良かったぁ…いっぱい食べてね』


「おう！あ、そうだ。これ、今月の分」


『ええ…いいのにぃ……しかもこんなにたくさん？』


「いーの。俺、彼女には財布、出させたくねぇの」


『！？………あ、ありがと…』




Aにとって"彼女"というフレーズは相当響くらしい。驚いた後すぐに真っ赤になった頬を隠すように台所に逃げる………可愛い。ただ………その背中に俺は反射的に妹の姿を重ねていることに、苦しくなる。あの時間から2年が経とうとしているのに。こんなにも魅力的な彼女がいるのに。変なことを考えてしまった頭を空っぽにさせるように、俺はあつあつの鍋の具を口に放り込んだ




『そろそろ片付けようか』



「そうだな」




俺の部屋だというのに、Aは手際よく片付けを進めていく。食器を運ぼうと茶碗を手に取った時、ふと、妹と家で皿洗いを一緒にしていたことを思い出した。何気ない家事が、俺たちにとっては数少ない共同作業で、2人きりの特別な時間だったから





「 洗い物、俺もやるわ。なぁ、いいっしょ？




────……っ、！ 」








そんなことを考えていたのが、いけなかった。不意に俺は、Aではなく、妹の名前を呼んでしまった




シンクで動いていた手がぴたり、と止まった。やってしまったと青ざめた俺に、背中を向けたままAが弱々しく呟く




『………やっぱり、勝てないよね』



「………」



『確かに私も翔太くんのこと、忘れた訳じゃないよ？でも…今は辰哉くんのことで頭いっぱい。でも……辰哉くんは違う。まだ妹さんのこと……』






「………ごめん」





「っ、…………これ終わったらすぐ寝よ！ね？少し感傷的になっただけだから」





振り返って苦しそうな笑みをくれた彼女は、また背を向けて手を動かし始めた



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