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ついには想いを伝えられるはずもなく、
彼女が紡ぎ出したアイビーグリーンが完結を迎えることもなく旅立ちの日が訪れた。
「文芸部を選んで本当に良かったと思います。
卒業するのは私1人ですがこれからも精力的に取り組んで部員を増やしていってください」
卒業式の日の夜、文芸部の皆で送別会を開いた。
ただ彼女との別れを先延ばしにしたかった俺のエゴ。
ああ、これでさようならかと苦しくて堪らなくなっていた俺に「先生、この後2人で会えませんか」と彼女が耳打ちをした。
「……話って、何?」
「最後に教えてください。私の下駄箱にお手紙を入れ続けたのは先生ですか」
「先生ですよね」と彼女は静かな車の中で俺に告げた。
もう遅いから送って行くと走らせた車を止めそうになる。
弾かれたように見ると、彼女は全て見透かしたような目だった。
「……どうしてかっていうと、ストックの花言葉の時。
先生はスマホで調べてくれて、すぐに“ ひそやかな恋 ”って言ったんです。
ストックはいくつも色や言葉の意味があるのに。
私ですか?……はい、
はじめから花言葉を調べた上で先生に尋ねました」
ゾクゾクとするような彼女の追求に蝕まれていく。
そんな俺をそっと抱きしめて「キスをしてください」と彼女は囁いた。
夢じゃない。夢じゃないんだ。
それからは彼女が許すままに、彼女の身体に触れさせてもらえた。車の中を荒い吐息が埋め尽くした。
窓ガラスが白く曇った。
「……彼と別れて俺と付き合って下さい。お願いします」
「……もう別れてます。進路違うし」
「……ほんと?ほんとに?……絶対大事にするよ」
「……何があっても私を離さないでくださいね」
「沢山愛して」と抱きしめ返してくれた彼女に
「絶対に離さないよ」とキスをした。
そうして手に入れた大切な愛だった。
俺の寂しいマンションに彼女を引き入れて
そこから専門学校に通わせた。
一緒に暮らして、もう片時も離れたくなかった。
俺は大人なのに彼女の方が成熟しているようで
付き合っているのに俺がいつも追いかけていた。
「A、ねえ、遅くなるなら連絡してって言ったよね?心配するでしょ…?」
「ごめんなさい」
「どこで何してたの?…誰といたの?」
その首筋の痕は何?
それは、愛を終わりにしたくなくてずっと聞けなかった。
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kae(プロフ) - 紫陽花さん» 紫陽花様、有難いお言葉感謝です😭怪しい彼氏も読んでいただけたのですね!嬉しい…似ているなんて本当に光栄な限りです。はるのちゃんは永遠に憧れの存在です。好き同士だと似てくるんでしょうか?😂こちらこそ読んでくださってありがとうございます!! (2022年8月25日 23時) (レス) id: ae2feaf230 (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - ユッピンさん» ユッピン様〜!嬉しいコメントありがとうございます!実は私もまたさせていただけるなら…と期待しつつ🙏悪女について沢山の捉え方とストーリーをご提供できて楽しく書かせていただきました!ユッピン様の応援あってこそです。これからもよろしくお願いします! (2022年8月25日 23時) (レス) id: ae2feaf230 (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - 紫陽花さん» 紫陽花様、第1弾の方も読んで下さり有難うございます🙇ぜひ今後ともかえちゃん、そしてはるのの執筆活動を応援して頂けるとすごく嬉しいです☺️またお会いできますように…!! (2022年8月25日 23時) (レス) id: dbb7f3d4be (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - ユッピンさん» ユッピン様、こちらにも感想を送って下さり有難うございます🙇😂私もコラボを受け入れてくれたかえちゃんには本当に感謝しています😢読んで下さったユッピン様にも、勿論多大なる感謝です🙇いつも素敵なコメントを本当に有難うございます…! (2022年8月25日 22時) (レス) id: dbb7f3d4be (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花(プロフ) - 完結お疲れ様でした。怪しい彼氏に続いて今作も最高でした。共同制作なのに作風が似ていて、とても読みやすくて楽しませていただきました。素敵な作品をありがとうございました。今後もお二方の作品楽しみにしています! (2022年8月24日 15時) (レス) id: 990636348e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Haruno x他1人 | 作成日時:2022年8月10日 21時