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その日を境に状況は一変した
Aに触れることも、求められることもなかった。もちろん彼女がこの部屋を訪れることもない。姿を見ることも声を聞くこともできなかった
当たり前のように次々と与えられていた豪勢な服や道具は、手元にあるものをすり減らしていく生活に変わった
そしていつしか、食事すらも……立て篭もる時間が増えていくと共に少しずつ取り上げられていった
それでも何故かAへの想いは冷めなかった。洗脳とは違う、愛してしまったことがこんなにも自分を変えてしまうなんてと、苦笑が漏れる
部屋から一歩でも出ようものなら、ここに戻れなくなる。そう感じていた俺は、限りある精神力と材料で絵を描き続けた
───Aにもう一度、俺の絵を見てほしい
ただ、それさえ一瞬でも叶えば良い。この絵を見て、俺の想いを伝えられたら。
その絵は、完成した
ただ、最後の力を振り絞った一筆を終えて、意識を手放した
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気づいた時には、知らない天井の視界。病院だった
駆けつけた両親は青ざめた。まさか今をときめく人気画家になったはずの息子がやせ細り、死を目前にしていたなんて想像もつかなかっただろう
こうして俺は強制的に実家に帰ることとなった
Aに一目、また会うことすら叶わずに
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──── 数年後
あれから人物画を描けなくなった。理由は分かりきっていたけれど、仕方がないと諦めていた
リハビリと共に始めた風景画で、久しぶりに大きな賞にノミネートされた事を両親や友人は大層喜んでくれた。これを機に俺が毎晩うなされる事が少なくなるだろうと感じたようだ
〈では、今回の大賞を発表します……〉
俺はその絵を見て、驚愕した
忘れたくても、忘れられない
Aにそっくりの女性が描かれていたからだ
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真実を確かめる事に、迷いはなかった
「あの…」
(はい?)
「この度は大賞、受賞おめでとうございます」
(あ、ありがとうございます。あれ、もしかして…向井康二さんですか!?僕、大ファンなんです!数年前の…あの大きな賞を獲られた時に、感動して。俺もこの道に進もうって決めたんです!)
「そうやったんですか……それは光栄ですわ」
(あの、僕に何か?)
「ええ。ひとつ、お伺いしたい事が───」
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kae(プロフ) - 紫陽花さん» 紫陽花様、有難いお言葉感謝です😭怪しい彼氏も読んでいただけたのですね!嬉しい…似ているなんて本当に光栄な限りです。はるのちゃんは永遠に憧れの存在です。好き同士だと似てくるんでしょうか?😂こちらこそ読んでくださってありがとうございます!! (2022年8月25日 23時) (レス) id: ae2feaf230 (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - ユッピンさん» ユッピン様〜!嬉しいコメントありがとうございます!実は私もまたさせていただけるなら…と期待しつつ🙏悪女について沢山の捉え方とストーリーをご提供できて楽しく書かせていただきました!ユッピン様の応援あってこそです。これからもよろしくお願いします! (2022年8月25日 23時) (レス) id: ae2feaf230 (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - 紫陽花さん» 紫陽花様、第1弾の方も読んで下さり有難うございます🙇ぜひ今後ともかえちゃん、そしてはるのの執筆活動を応援して頂けるとすごく嬉しいです☺️またお会いできますように…!! (2022年8月25日 23時) (レス) id: dbb7f3d4be (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - ユッピンさん» ユッピン様、こちらにも感想を送って下さり有難うございます🙇😂私もコラボを受け入れてくれたかえちゃんには本当に感謝しています😢読んで下さったユッピン様にも、勿論多大なる感謝です🙇いつも素敵なコメントを本当に有難うございます…! (2022年8月25日 22時) (レス) id: dbb7f3d4be (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花(プロフ) - 完結お疲れ様でした。怪しい彼氏に続いて今作も最高でした。共同制作なのに作風が似ていて、とても読みやすくて楽しませていただきました。素敵な作品をありがとうございました。今後もお二方の作品楽しみにしています! (2022年8月24日 15時) (レス) id: 990636348e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Haruno x他1人 | 作成日時:2022年8月10日 21時