天涯の巫女と付喪神様 二

40話 領域へ ページ50

私は皆を背に
こちらと向こうの世界を
繋ぐ道を開く
きっと、私を神隠ししたのも
物吉様が呼んでるから
それに応えない訳には
いかない

やれる事を、出来る事をしたい









『‥かの理想郷に魅せられし都
我が霊力を喰らいて
夢現への導をここへ』








こちらと物吉様の領域を繋ぐ為
私の霊力と干渉させる
一度呼んだなら、もう一度呼んでくれる筈

どこからともなく
緩やかな風が吹く
髪、服、木々、全てを揺らす

ぼんやりと向こうに見える領域
ゆらゆらと揺らぐ灯籠が導
私は、薬研に手を差し出した
迷いなく私の手に重なった手
そして、私は振り向き言う









『私が通ればこの導は消えます
次に開く時は
私達が戻って来る時です』

「薬研、桔梗殿を頼んだよ
気をつけて」

「あぁ、一兄
薬研藤四郎の名に誓う」

「必ず戻ってくるんだぞ」

「桔梗ちゃん、薬研くん、気をつけてね」

「‥ちゃんと帰って来い」

『「行ってきます！」』









強く繋いだ手、揺らいだその導へと
手招くその先はまさに理想郷
花の香り、桜が咲き乱れ
気候は常に温もり溢れる

遠くから聞こえてくる元気な声は
薬研を苦しめる









「‥‥‥‥」

『行こう、薬研』

「あぁ‥

それより、大将
俺達は大丈夫なのか？
見られてないのか‥？」

『大丈夫だよ
姿、声も見えてないよ

ここでは私達が《夢現》
実態がない幻想のような
ものだからね』

「そうか‥」

『早く物吉様を探そう』

「そうだな
なにか手掛かりはあるのか？」

『手掛かりはない
けど、この領域内の何処かに
必ずいる
私を呼んだと言う事が証明』

「なるほどな
手分けして探すか？」

『それは駄目
一緒に探そう、2人の方が心強いし』

「それもそうだな

うし、探すか！」

『うん！』









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