天涯の巫女と付喪神様 二

36話 ページ46

物吉様探しは明日となった
私の体調も考慮した結果
そして、その日から近侍が
つくようになった
病弱体質な私、近侍は薬研に決まった
寝静まった夜は
抜け出す事が少しずつ
日課になっていた

縁側にある下駄に指を通し
戻りつつある本丸の庭を散策する
今日は満月‥
月の道を踏むように歩く
夏の香りに初夏を感じた

ここへ来て幾日経っただろうか
現世はどうなってるのか
もう、考えなくなった
考えるのはこっちの事ばかり

現世にはもう未練が無いと言うこと









『‥‥‥‥‥』

「出歩くのが好きだな、大将
目を離したらすぐに居なくなっちまう」

『薬研‥』

「よっ
俺っちから逃げれると思ったのか？」








コツンと軽く頭を指で叩かれる
その顔は優しい
私は、逃げられるもん‥と目を逸らし歩く
そして、私の後ろを着いてくる

どーだかな
今度、鬼ごっこしてみるか？
薬研の提案に笑って頷いた
そしたら、頭に手を乗せられる
私は不思議そうに
見上げた









「‥大将に涙なんて似合わねぇよ
そうして、ずっと笑っててくれや」

『薬研‥』

「神隠しされて
何があったかは聞かねぇ
無理に聞いてもまた大将は
はぐらかすからな
言いたくなったら言えば良いさ
まぁ他の旦那方は聞きたくて
うずうずしてるけどな」

『‥‥‥‥』

「大将が言いたくない事は
言わなくていい
だけど、これだけは言わせてほしい

例え何を聞いたって
俺っち達はずっと大将の刀だし
そんなんで嫌うかよ」

『‥！』









にかっと太陽のような笑顔

さぁ、帰ろうぜ
明日から物吉、探すんだろう？
なら、体力回復しないとな！

私の手を掴み歩き出す
握られてる手

あ、あのね‥！と声を掛ければ
ん？と見つめ返してくれる








『っ‥‥あ、あのね‥』

「どうした？」








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