天涯の巫女と付喪神様 二

33話 声 ページ43

『‥‥‥‥‥‥』








何度見ても私の顔は《物吉貞宗様》
鏡の前、体をくねったり
一回転してみる
そして、なんと言っても
すごく体が軽い
病弱体質だった私には
なんとも嬉しい事
子供のようにはしゃいでしまう
今なら、何だって出来そう
わくわくとした気持ちで
本丸内を歩く

何かしたい、この気持ちが私を弾ませれる

体が軽いってこんなに素敵な事なんだ









「おーい、物吉ー！」

『薬研？あ、じゃなかった

薬研さん！』

「今から兄弟達と蹴鞠りすんだ
一緒にやるか？」

『はい！ぜひやりたいです！』

「いい反応だな、こっちも嬉しいぜ」

『動きたくてうずうずしてたのです！

薬研さん、早く早く！』

「おいおい、引っ張るなよ」









薬研の手を引っ張る
それより、蹴まりって平安の人達が
してた遊びだよね？
私に上手く出来るかな
不安を抱く









『蹴まりとは‥
(サッカーの事か)』

「大将の時代の遊びらしい
ごーるってやつを守りつつ、相手のごーるに入れたら一点入るってな

足で鞠みたいなこいつを蹴るから
分かりやすく俺っち達は《蹴まり》って言ってんだ

さぁ、やろうぜ、物吉」

『はい！』







こうした楽しい日々が
一日一日と過ぎていく

主様のお使いも終わり
ゆっくりしようと歩いてる時だった


―桔梗―

え‥？桔梗‥？

―桔梗、お前は名も分からなくなるほど喰われてしまったのか―

何を言ってるのですか？

―思い出せ桔梗、お前は誰だ？
お前の居る場所はここか？
違うだろう
お前が在るべき場所、お前の帰る場所を―

在るべき場所‥帰る場所‥？

―そうだ、ここは彼奴が作り出した紛い物の世界、そんな奴に意識を喰われるな
本当の自分の姿を見失うな

お前は桔梗なのだ、物吉貞宗ではない―

桔梗‥‥‥私‥‥

―強く持て、お前の意識を喰わしてはいけない

お前には、奴等がいる、帰るべき場所がある
それだけを忘れるな―









『‥っ‥‥‥』

「桔梗様‥！！」







私、帰って来れたの‥？





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