天涯の巫女と付喪神様 二

29話 古備前のお刀様 ページ39

わ、私はなんて事を
大包平様にだ、抱き‥両手で頬を
包み込めば、熱が伝わる
はぁ、もう‥落ち着かせる為
平常心、平常心と心の中唱える

そんな私に、おい、桔梗と
声を掛けてきたのは
紛れも無く大包平様で
私は、少し不思議な気持ちで
見つめ返した







「ありがとう」

『！』






ただそれだけ、それだけで
伝わってくる思い
私は嬉しくて微笑み、はいと頷いた

俺は大包平、突然お名前を言うから
存じていますが‥と返せば
良いから続きを聞けと言われる
私は大包平様と向き合うように
正座し直した







「池田輝政が見出した、刀剣の美の結晶。もっとも美しい剣の一つ。ただ……」

『ただ？』

「いや、気にするな。なんでもない

今日から桔梗を護る刀になろう
遠慮なく俺を使ってくれ」

「大包平がなると言うのなら
俺もなろう

よろしくな、桔梗」








大包平様のお隣に鶯丸様が並び座り言う
私は、はい！よろしくお願いしますと
頭を垂れれば
後、その様付けはやめてくれと
大包平様の声、大包平で良いと続く
俺の事も鶯丸で良い、その代わり
俺も桔梗と呼ぶと鶯丸様

流石に呼び捨てには
出来ないので、大包平さんと鶯丸さんで
宜しいですか？
そう聞けば、お二人は同時に頷いた

私は嬉しくて微笑めば、ぐいっと
顔を近づけてきた鶯丸さんに
驚き身を引いた








『なな、なんでしょうか‥//！？』

「あぁ、ようやく分かった気がする」

『？』

「何が分かったんだ？鶯丸」

「あぁ

三日月達が絆されてる理由だ」

「絆されてる？」

「桔梗、悪くないな。俺も気に入った」

『あの‥ち、近いです、鶯丸さん‥//』

「ん？そうか？」

「一定の距離がある、鶯丸」

「一定の距離？
膝丸、俺には分からないな
近ければ近い程、桔梗の顔が良く見えて良い」

「鶯丸、一定の距離を覚えた方が
身の為かな？」

「兄者、何故抜刀してるのだ‥」

「僕の機嫌を著しく損なわれたから、かな」

「落ち着いてくれ、兄者
身内同士のいざこざはやめよう」

「僕は落ち着いてるよ？」

「どこがだ」

『ふふ』

「お前も大変だな、このような奴らに好かれて」

『そんな事ありませんよ、鶯丸さん
私はとても嬉しいです

‥今まで好かれた事なんて
指折り数えられるぐらいですから‥』








―あんた何か消えちゃえ！！―

―あの子だよね？
「」の家に一緒に住んでて、おまけに不倫の子―

―あー、そうそう
しかも手癖悪いんだって、母親に似て―

嫌われる事の方が多いや‥

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