天涯の巫女と付喪神様 二

22話 菊 ページ26

髭切さんと話しながら
手当り次第に見る部屋、求めている物には
出会えないまま、一刻一刻
私と髭切さんの足は自然と
まだ探していない2階へと
そう言えば、この先は帰蝶さんのお部屋
だからかな、少し髭切さんの空気が
ピリついたのは
私が開けた襖、そして私と髭切さんを
出迎えるのは
大輪の菊が咲いた真っ白な羽織り

髭切さんはそれを見て
厳しそうな目をしていた
私は、探しましょうかと微笑めば
何も言わず、髭切さんが微笑み返してくれた
今にも羽織を切り刻みそうだった
それ程、帰蝶さんが嫌いなのかな‥
日記の事、まだ話さない方がいいよね‥

気持ち沈んだまま探す紙






『やっぱりありませんね‥どうしよ』

「そうみたいだね

桔梗、ここからもう出ようか」

『そうですね』

「まぁ何とかなるよ
紙がなくても、別の白い物に
描けば大丈夫、大丈夫」

『紙じゃなくても‥あ！』

「？」





私は衣桁に掛けられた羽織を見つめた
求める大きさより少し
大きいけど、この羽織なら充分だと
でも、帰蝶さんの大事な物だったら‥
私はじっと見つめた
掛けられた羽織は綺麗に大輪の菊を
咲かせていた
国広さんと出会った時にもあった羽織
近くで見れば、1度しか袖を通してない
そう思える程綺麗なままだった

迷ってる暇などない
鶯丸様が待ってる大包平様の為に
私は、そっと羽織を手に掛けた






「‥それを使うの？」

『はい、ダメだとわかってますけど
でも、帰蝶さんなら
許してくれると思うから』

「どうしてそう思うの？」

『それは‥』

「桔梗は帰蝶がどんな女か知ってるの？」

『‥‥‥』

「あの女はね、僕達をただの《道具》でしか見てなくて
見てくれだけで選んで
必要がないと決めた者に対して
目もくれず、いなかったかのように扱う
大切にされていた頃が
嘘のように」

『嘘です！
そんな事ありません！
帰蝶さんは、そんな方じゃありません！』

「桔梗がどうして、そんなに怒るの？

桔梗はまるで帰蝶を知ってるように
否定するんだね

何を見たの？」

『っ‥えっと‥』

「ふぅ‥困らせたい訳じゃない

だけど、僕達に隠し事はやめて欲しい

僕達は知ってるよ？
桔梗が、帰蝶の夢を見たことを」

『！』

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