天涯の巫女と付喪神様

38話 ページ38

「あ、ねぇ見て」






加州君が指さした先
それは、ずっと曇天だった空が
少しずつ雲が薄まり
この本丸に暖かい光を射していた
空ってあんなに明るい綺麗な色なんだと
目が奪われる
曇天の上に広がった世界
初めて見る景色
大切な『友』を抱く腕に少し
力が入った

顕現当初から見たのは灰色の四角い空
だから、きっと
その先もずっと灰色だと思ってた
だけど
今、目の前に広がるそれは
想像と違って
一期君と同じ髪色をした
綺麗な空だった

ねぇ、伽羅ちゃん
人間って捨てたものじゃない、かもね
僕が見たあの子は
僕達が思ってるよりも
ずっとずっと素敵な子だよ、きっと
早く、見せたいな
伽羅ちゃんにも、この綺麗な空を






「さてさて、これで
他の連中も動き出すか？」

「そおね、こんだけ晴れてたら
何事だって出てくるでしょ」

「桔梗が眠っている間に
俺達が出来ることをするぞ」

「そうだね
これ以上、桔梗の手を煩わせてばかりじゃ
僕達の名にも傷がつく」

「そうですな
桔梗殿ばかりに頼っていては
私たちがなんの為にいるか
真意が問われますからね」

「薬研、燭台切
桔梗を任せて良いか？
俺達は少し話し合いをしてくる」

「あぁ、俺っちたちに任せな
血が滾るような話し合いは
やめてくれよ？」

「わかっておる

では、行くぞお前達」

「いってらー」





三日月の旦那を筆頭に
出陣組の旦那方が席を立ち
他の連中の所へ足を歩かせた
俺っちはそれを見届けると
眠ってる大将を抱き上げた
どこ行くの？
そう聞いてきた燭台切の旦那に
部屋に戻る
ちゃんと布団に寝かせねぇとな
行くぜ
そう返せば歩き出した

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