天涯の巫女と付喪神様

36話 蛍の光 ページ36

淡き光が蛍の様に光り
辺りへ散る
私は両手を合わせ目を閉じる
ふわっと優しい風が
包み込めば、髪、服が緩やかに揺れる

ーA、今から私がお前に教えるのは
魂を呼び戻す術、だがこれは
非常に霊力を持っていかれる故、使用してはいけないよ

どうしてもと言う時にこの術を
使用しなさい、いいな？ー

お爺様、今がその時なのです
微力でも構いません
私にお力添えをお願いします
大切な人が失った『友』の魂を
今ここへ
還し戻してあげてはくれないでしょうか？

そっと目を開ける
私の視界いっぱいに入る
蛍の光、ふよふよと漂う





「桔梗の名を持ちて命ずる
永劫たりえる光よ
我が霊力を喰らいて、奇跡の名を宿し
彼の魂、死の淵より喚び還せ」





呪文を唱えた瞬間、意識が飛ぶような
感覚に陥る
一気に持ってかれる霊力
力が抜けそうになる
祈るように強く握りしめた両手
ここで倒れる訳にいかない
加速する、霊力が底をつきそうになる

あぁ…本当に、命を懸けるかも知れない…
約束、守れるかな…？

不安が渦巻くと共に
命の危機だと告げる空になっていく体
これ以上はやめろと
そう、言っているように聞こえた
どんどん抜けて行く
自分で立ってるのがやっとだ
虚ろな目が見た先
その光は私を包み込むように
優しく纏ってくれた

その光はとてと懐かしくて
優しくて、私の知ってる者だった…





「…お爺様…」





私の願いを聞き届けに
来てくれたのですか？
目を閉じれば零れる涙

ーA、私がお前を支えようなー

その言葉と共に
蛍の光が形を戻していく
生命を吹き込むように
そして、役目を終えるかのように
天へ還る蛍の光たち
私はそれをずっと見つめていた

お爺様、ありがとうございました
本当に…





「ありがとう…っ…」





陣の中にあったのは綺麗に
戻った大倶利伽羅さんがあった

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