_kwmr ページ41
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「…え、今なんて?」
「河村さんでも聞き返すんですね…!」
ちょっと感動してしまった。
河村さんと聞くと、神というイメージというか、なんでもさらっとこなしそうなイメージを持っていた。
「いや、信じられないことを聞いたから…」
こんなロマンもかけらもないところで、しかも何の脈絡もなくこんな想いを伝えられたら誰でもきょとんとするだろう。神と呼ばれるこの人ですらそうなのだから。
「え、好きってことですか?」
「ちょっ、なんでまた言うの!?」
焦ったようにそう言った河村さんが新鮮というか珍しくて思わず微笑んでしまう。
そういうところが好きなんだよな、なんて言ったらもっと新鮮で面白い様子が見られるだろうか。
「しかもこんなところで」
“こんなところ”と彼が形容するのも納得がいく。
なにせここは東大の図書館で、周りには人がいっぱいいるのだから。
顔をすこしだけあかく染めても彼の美しさは変わらず、ちょっとだけ憎い。
なぜ彼はこんなにも美しいのだろうか。
問いかけても無駄だけど。
「…まぁ、こんなところじゃないとかえって言えませんから」
ムードというか、その場の空気が整ってしまってはもう恥ずかしさのあまり何も言えない。
「僕もです」
「へっ」
“Aさんも驚いたじゃないですか”
河村さんは優雅にほほ笑んだからはまたつづけた。
「僕も、Aさんのことが好きです」
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