報われない恋に終止符を_fkr ページ30
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「ふっくらさん!!」
「Aちゃんおはよ」
“おはようございます”
いつものようにふわふわとした笑みを浮かべてはいたものの、いつものそれとは違うことはすぐに理解できた。
「うまくいったんだね」
“はいっ”
俺の言葉に頷いた彼女の頭をふわりと撫でた。
…俺はやっぱり、“お兄ちゃんポジション”から抜け出せないらしい。
彼女の純真無垢な瞳に、心の中でため息を吐いた。
俺が、君を幸せにしたかった。
君の手を握るのは、俺がよかった。
そんなことを心の中でつぶやいたところで、無駄だというのに。
「福良さん?」
「ううん。なんでもない。そろそろ須貝さんも来るんじゃない?」
俺がそう言ったとたん、彼女の頬が紅潮していく。
そして、幸せそうな顔をして笑うんだ。
わかりきっていた展開だというのに、こうも現実を突きつけられるとクルものがある。
俺が幸せにしたかった。
その目に映るのは、その心に響くのは俺がよかった。
今のAを見ていると、自分が、自分がとなってしまいそうで、そっとオフィスから出ていく。
人の雑踏に紛れれば、この感情も紛れてくれるのではないかと、わずかな期待を胸に抱きながら。
「福良さん」
「…っ、伊沢」
それでもうちの鋭い社長には気づかれてしまったようで、伊沢は俺のことを心配そうに見つめてくる。
「おつかれ」
彼は俺に特に何を言うわけでもなかった。
ただ四文字、その言葉だけを言って俺の隣に立った。
「今日、飲みいく?」
「…伊沢のおごりで」
泣きたくなるのを、唇を噛み殺して耐える。
「…泣いてもいいよ、俺の前なら」
その温かさに、本当に泣きそうになってしまった。
…好きだった、ずっと、ずっとAのことが、好きだった。
「すき…だったんだよ」
「そうだね。福良さん見てればわかるよ」
送り出した時だって、振られてくる希望を、微かに抱いて。
須貝さんもAのことが好きだということに、気づいていたのに。
そんな希望を抱いても無駄だと分かっていたのに。
「好きだった」
でも、Aの将来に、きっと俺は隣にいないんだ。
この
「今日は仕方ないから俺がおごるよ」
そう言い切った伊沢の隣に並ぶように立った。
報われない恋に終止符を。
それでも俺はきっと君を愛し続ける。
トクベツになりたかった_kwkm→←たとえ話をしようか_tmr
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