瞼を閉じればそこに_ymgm ページ28
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イチャイチャじゃなくて、どちらかというと山上さんの一方通行です。死んじゃってるから叶わない
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あたり一面には、墓石が並んでいる。
ところどころ、お参りに来た人がいるのか、花が飾られているものもあった。
勿論俺も例外ではなく、その墓石の前に立った。
「俺、ちゃんと東大受かりましたよ」
そこに眠っているのは、俺の大好きな先輩で。
去年、東大に落ちて一浪すると決めていた矢先、交通事故に遭い、そのまま亡くなってしまった。
即死だったと目撃者は言うけど、問題はそこじゃないと思う。
加害者の飲酒運転が原因で。
一年後のためにまた勉強に励もうと考えていた彼女に対する仕打ちがひどすぎる。
運がなかったとAさんの両親は涙を浮かべていた。
彼女は何も、悪いことはしていないのに。
やり場のない怒りをそっとこらえて、そのまま俺は瞼を閉じた。
彼女の声やぬくもりが、忘れられなかった。
幾度となく、忘れようとしても、忘れることなんてできなかった。
でも、彼女のことを忘れてしまう自分に、同時に恐怖心さえ抱いた。
瞼を開けて、墓石を掃除し、その場を立ち去る準備をする。
「好きですよ、Aさん」
たとえ、貴方がこの世にいなくても、おれはきっとあなたを忘れることなんてできやしない。
ふわりと春の風が、俺の頬を撫でた。
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