サンタからの贈りもの_izw ページ20
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俺には彼女がいるけれど、クリスマスという今日、彼女と共に過ごすわけではない。
俺はオフィスでやらなきゃいけないことがあるし、AはAで研究にスパートをかけているのだ、お互いに会う時間がない。
「え、今日A来ないの?」
「うん、大詰めらしいよ」
須貝さんにそういうと、農学部たいへんだなと苦虫を噛み潰したような顔をしながら言った。
「それにAは根っからの研究者向きだよ。あいつの頭の中の半分は研究で埋まってる」
俺がそう言って笑うと、須貝さんも笑みを浮かべた。
「まぁ、らしいっちゃらしい」
Aをライターとして誘うのはどうかという意見も一時期出たし、俺もそれに賛同して誘ったこともあるけど『研究ができない』の一言で一蹴された。彼女は筋金入りの研究者である。
勿論そういうところを好きになったし、今更とやかく言うつもりはないけど。
「でもやっぱりクリスマス一緒にいたかったなぁ」
「Aも同じこと思ってるんじゃない?」
「え、あのこてこての研究者が?」
須貝さんにそう言うと、彼はライン画面を見せてきた。
『伊沢に会いたくないの?』
そんな須貝さんの問い掛けに対する彼女は『会いたいに決まっているじゃないですか』という返信。
それだけで彼女のことを思い出してしまう。
…俺もだよ、俺も、Aに会いたい。
「もう、須貝さんこんなことしないでよ、会いたくなっちゃうじゃん」
「だって二人とも意地っ張りじゃん」
“だからナイスガイサンタからのプレゼントですよ”
そう言ったとたん、呼び鈴の音が鳴り響いた。
「…じゃ、俺は帰るから」
「須貝さん」
俺が頭を下げると、須貝さんわわしゃわしゃとそれを撫でた。
「素敵なサンタクロースだよね」
「それは認めるけど…須貝さんばっかり見てると俺妬くよ?」
Aがそっと俺の頬に自分の唇を押し付ける。
それだけでも、俺が照れるには十分なのに、彼女はこう続けた。
「今は拓司が私の脳内全部を占めてるよ」
その言葉は、俺の理性を切らすのには十分で。
「ずるいなぁ、Aは」
サンタさんの正体は?_fkr→←こだわる理由はきっと_k-chan
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