【第2部】AnotherStory (ページ18)

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僅かな確率にかける想い＿trsk ページ18

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「…そろそろ、目を覚ましてくれてもいいんじゃないかな」

東京大学医学部附属病院。

彼女が大手術を経験してからもうそろそろ2年が経過しようとしている。

「あ、今日も来たんだ」

「まぁね」

“鶴崎も毎年偉いねー”

僕を見ながらそう言った水上は、白衣を着こなしていて、俺の同期の水上って感じでは無くなっていた。

「昨日は伊沢さんたち来てたよ」

「あぁ、あのメンバーか」

今でも彼らはQuizKnockの名をクイズ番組やコメンテーターを媒介して世間に轟かせている。

僕らも憧れ、目指した彼の姿は、今でも変わらずかっこよかった。

「Aはあそこにいる時が一番、輝いていたからね」

「悔しくないの？」

「悔しくないって言ったら嘘になるけど…それでも、僕があの人の姿に憧れていたのは事実だからね。憧れるAの気持ちもわかるよ」

彼らといる時のAの目は、尊敬と憧れで輝いていた。

「…A、目覚めない確率の方が大きいってことも知ってるのに」

自分で食べることも、喋ることも、見ることも出来ない、そんな植物状態の彼女。

これって本当に生きているって言えるのかな、そう思いながらも僕は毎年、クリスマスに彼女のもとを訪れてしまう。

キリストが生まれたクリスマスなら、何か特別なことが起こるんじゃないか。

そんな低い確率に縋っているのだから。