その恋のスタートはフェードイン_sgi ページ15
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『Hi!Shunki!How are you?』
「…いやお前何言ってんの?」
深夜2時。
研究と格闘している最中に元気な声が耳に届いた。
『あれ、そっち今何時?』
「貴方ね、ちゃんと時差を計算して電話しなさい?」
“HAHAHA!!Sorry.Don't get so angry,please?”
そう言った彼女に詫びる意志を感じられなかった俺は思わず携帯を握りしめる手に力がこもった。
「今ね、2時なの。わかる?そっちは7時だとおもうけど!!」
『…あー、うん。そうだね』
気の代わりが早い彼女は、今度は急にテンションが低くなった。
「何?どうしたの?」
『…いや、駿貴に会いたいなって』
「…っ」
不意打ちにそんなことを言われて、照れない男がいるだろうか。いや、いない。
「Aらしくないじゃん。そんなこと言うなんて」
俺だって、Aに会いたいよ
そう言えたら、きっとこの関係性は変わると思う。
そもそもそんなことに気づかなかった修士時代の俺を殴り飛ばしたい。
『…まぁ、あと3ヶ月くらいなんだけどね』
電話の奥で、彼女の名前が呼ばれたのが聞こえた。
「ん、行ってきなよ。そろそろ集大成なんでしょ?」
『さすが、わかってる』
彼女の声が微かに弾んだ。
少しづつ、少しづつ彼女に溺れていく。
そんな自分を嘲笑せずには居られなかった。
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