バレンタイン_QuizKnock ページ1
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満を持してビターチョコにした。
「皆さん!!チョコですよ!!」
私がそう言って袋を差し出す。
オフィスの机に載せれば、みんなが続々と寄ってきた。
「本物の義理チョコだ」
川上さんが呟く。
そう言えば川上さん二日酔いの中ゲテモノたべさせられてたな、なんて思わず笑った。
「ほら、皆取って!」
1人ひと袋。
そんなチョコだけど、やっぱり食べて貰えると嬉しいよね。
「リア充は駆逐するべき」
「バレンタインは事案だ。」
そんなやり取りも今日だからこそ出来ること。
「で、Aはどうするの?」
「えっ?」
「大学卒業後」
伊沢さんの言葉に“まだ言ってなかったや”と思い出す。
「東京大学大学院 工学部電子情報科パスしましたよ」
当たり前のようにサラリと言われ、みんなはぼーっと私を見つめる。
「そういうの早く言えよ!!」
伊沢さんのこの言葉を皮切りにどんどんみんなが私を攻め立てて行く。
解せない。だって言わなくてもいいかなって。
「あのねA」
「ひゃい!」
川上さんにギリギリまで顔を近づけられる。
やばい。鼻と鼻くっつく。
そんなくだらないことを考えていた。
「俺達は、Aのこと大好きだからね」
その川上さんの言葉に、胸が熱くなった。
この人たちは、私のことを好きでいてくれている。
「…ありがとう、ございます。」
川上さんと少しだけ距離を取って、私は自分のできる精一杯の笑顔を浮かべた。
「私も、皆さんのこと大好きですよ!!」
それだけ言って、私はオフィスから出ていく。
寒いツンとした空気が鼻を通っていった。
“そういう好きじゃないんだけどな”
川上さんの呟きは、私には聞こえなかった。
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