満月の夜 ページ1
月はいつだって、人を狂わす。
今日もまた一人、月に狂わされた哀れな人間が、ここに。
「うああああああ!!」
響き渡る悲鳴、壁を彩る赤い花。
男は自身の血に濡れた肩を押さえ、家から飛び出した。
「誰か、誰か!!」
助けを求める男の声が虚しくこだまする。
「あっ!!」
恐怖のあまり足を縺れさせ、ころげる男に向かって伸びる影。
血に濡れた長い爪、人間の腰ほどの太さの腕はおよそ人間のものとは思えないほど青白かった。
「いやだ…..だれか…助け...。」
鬼は、男めがけて拳を振り上げた。
男は恐怖のあまり逃げることもできずにその場にうずくまった。
脳裏によぎるのは懐かしい思い出。楽しかった日々を思い出しながら、男は死を覚悟した。
そんな時だった。男の耳に、凛とした鈴の音が届いたのは。
「ぎゃあああああ!!!」
一瞬で意識を引き戻された男が目にしたもの。
それは悲鳴をあげ、切り落とされた自分の腕を信じられないといった表情で見つめる鬼と、その鬼に向き合う一人の少女だった。
男は目を見張る。風になびく赤い羽織、絹のような黒髪、月光に照らされ鋭く光る刃。
地面を強く蹴り、鳥のように舞い上がった彼女は鬼の頸めがけ刀を振り下ろした。
断末魔を上げる間もなく、頸を切り落とされた鬼が、瞬く間に灰となって消えていく。
その様をじっと見つめる少女を見て、男は安堵の声で呟いた。
「月宮、Aさま…….。」
少女は振り返り、にっこりと微笑んだ。
少女の黄金の瞳は、まるで月のように美しく、穏やかだった。
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フジッピー(プロフ) - かなとさん» すみません。言われるまで気が付きませんでした。ありがとうございます。 (2019年9月19日 0時) (レス) id: 7e2904e8b4 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい。違反だという意識はないんですか? (2019年9月18日 12時) (レス) id: bb9d67c977 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フジッピー | 作成日時:2019年9月18日 12時