彼の隣席【フロイド】

28日目 ページ30

｢と、いうことで、裏のドリンクの販売は今すぐ中止し、利益は全てラウンジに上納して下さい。そうすれば学園側には報告しませんので｣


話が纏まりサインも貰ったところで、アズールは出店を後にした。その表情は大変満足気である。臨時収入が入ったのだ、ラウンジの設備の新調にでも使うのだろう。
そしてなにやら選手が入場しているであろう方角から、喧騒や悲鳴みたいものが聞こえるがアズールはそれを知らん振りしてラウンジの方へ歩いていく。ラウンジには予想通り沢山の客が来ていた。今日は学外の客が多い。粗相がなかったか今日のフロアマスターに確認を取ると、2人は奥にまわった。


｢んふふ、ねぇさっきのアレ、アズールでしょ？皆キャアキャア言ってた｣
｢…さて、なんの事でしょう｣
｢アズールも楽しい事するねぇ、｣
｢ほら、お喋りしてないで着替えてください｣
｢はいはぁい｣


更衣室に放り込まれ、ラウンジの制服に袖を通す。そして何これ、と眉を顰めた。アズールゥ？と外に向かって声を出すと、なんですかー？と軽い返事が返ってくる。ちょっと来てー、と続けて言うと更衣室の扉が開いた。そして、何か用ですか僕は忙しいんですよ、なんて言いたげな目でAを見た。


｢…これ、聞いてないんだけど｣
｢言ってませんから｣
｢なにこれ？｣
｢ジェイドの提案です｣
｢へぇ、ジェイドったらよっぽどいい夢(・・・)見たいんだねぇ｣


これはAのユニーク魔法に関する発言なのだが、彼女は余程気に入らないらしい。ひくりと口元が引き攣る彼女が着ているのは、特別衣装とでも言おうか。青を基調としたふんわりとした膝丈ほどの制服は、普段の落ち着いた制服とはテイストが全く違う。
スカートの裾にいくにつれ青色は淡くなっていき、上太ももより下は足が透けるほど。背中にはリボンがついており、それはスカートの丈より長い。ヒラヒラとまるでクラゲのようだった。


｢ジェイドは幼馴染をどうしたいんだろうね｣
｢さぁ？｣
｢これでホールに出ろと｣
｢えぇ｣
｢訴える｣
｢何故です？｣
｢嫌だから。これ絶対目立つでしょ｣
｢常日頃から"あの"オクタヴィネル寮 寮長と、"あの"リーチ兄弟と一緒にいるのにですか？｣
｢…自分で言うんだ｣
｢それにフロイドと取引したそうですね。ラウンジで2倍働くと｣
｢なんで知ってるの…てか、それとこれとは話が違くない、？｣


ベシャッと潰れるように床に座り込んだ。これは何を言っても無駄そうだった。

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