彼の隣席【フロイド】

25日目 ページ27

｢うわぁ…｣


隣で感嘆の声を上げるAに、アハハとフロイドが笑った。彼女の視線の先にはメインストーリートに連なる出店、出店、出店。ガヤガヤとうっとおしい程の人の数と色んな匂いが立ち込める、いつもとは全く様子の違う学園内にAは胸を踊らせていた。

生徒達の熱気に包まれた、皆の待ちに待ったその日は見事なまでの快晴。絶好のマジフト日和である。そう、今日は年に一度の寮対抗マジフト大会。


｢お、Aじゃん｣
｢ん、、あ、エーデュースだ｣
｢一緒にすんなっつーの｣
｢えーカニちゃんとサバちゃんじゃーん｣
｢っあ、フロイド先輩、おはざいまっす｣


エースとデュースが出店の間からひょっこり首を出して、挨拶する。その隣にはあの噂の監督性は居ない。クラスも一緒なのに入学式以来、取っている授業の関係でか遠目で見るくらいで、直接話した事はなかった。どうやらエースとデュースはその監督生と仲が良いらしく、昼食なんかも一緒にとっているらしいが、Aは基本的にフロイド達ととっている。会おうにも会えない。


｢ねぇねぇ、かんとくせーは？｣
｢あーー今は別行動中。アイツまたなんか厄介事持ってきやがってさ…｣
｢っておい、こんな事してる場合じゃないぞ、エース！｣
｢おー。じゃなA｣
｢んー｣


ばいばーいと手を振って、走っていく2人を見送る。いつもバタバタしている彼ら。監督性が関係していて、少し前にはハーツラビュルの寮長がオーバーブロットしたとかしてないとか。


｢クラゲちゃん、行こ｣
｢え、あ、うん｣


クイッと腕を引かれ、人混みに連れ去られる。グイグイと前を行くフロイド。彼は背が高いし威圧感がある。そのためが道を作るのは容易らしい。しかしAはどうだ。いくら引っ張られているとはいえ背は高くないし、フロイドによって作られた道はすぐに閉じてしまう。ぴっとりと後ろをついて行くしかなくて、思わずフロイドの足を踏んでしまわないかヒヤヒヤした。メインストーリートを抜けて、中庭まで来るとフロイドは突然止まった。するとそこにはアズールとジェイドが待っており、アズールの手には分厚い紙の束が握られていた。


｢全く…2人とも、遅いですよ｣
｢クラゲちゃんのせいだよ。カニとサバなんかに構ってっから｣
｢えー…｣


少しトゲのある意地悪な口ぶりのフロイドを見やると、フロイドは一変、ニヒニヒと面白そうに笑った。

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