42 ページ42
「北斗ダメ、帰ろう」
薬を受け取ろうとする北斗に駆け寄って、
その手をとった。
突然現れた私に驚いたのか、
北斗も男たちもぽかんとしている。
「A、なんで…」
「ダメだよこんなの。まだ何もしてないんでしょ？まだ大丈夫だから」
口をぱくぱくさせる北斗が絞り出した声は細くて弱い。
つかんだ冷たい手もかすかに震えている。
「ね、こんなことしちゃダメだよ、だから帰ろ…っ！」
「Aっ…！」
びっくりして固まったままの北斗を動かそうと必死になっていたせいで、
まわりにいるスーツの男たちの存在を完全に忘れてしまっていた。
その中の一人に勢いよく突き飛ばされて、
バランスを崩して壁際まで床を転がる。
「い、ったぁ…」
「A、Aっ」
「お姉さんさあ、勝手に入ってこられたら困るんだよねー俺らも。話聞いてたみたいだし？」
転がった勢いで壁に背中を強く打って、
そのまま床にうずくまる。
泣きそうな顔で駆け寄ってくれた北斗の後ろに、
さっきの男たちがゆっくりと近づいてきた。
「お姉さんがこいつの何なのか知らないしどうでもいいんだけどさ。
…売られるかここでしぬか、好きなほう選んでいいよ？」
タバコに火をつけながら一人がそう言って、
まわりの男がまた一歩ずつにじみ寄って来る。
やめて、来ないで、って声を出したくても
背中を打った衝撃は思いのほか強く、うまく息が吸えない。
しゃがみこんで私の顔を覗き込んでいた北斗が、私の前に立ちはだかった。
やっぱり震えたままの手で、ズボンのポケットからゆっくりと何かを引き抜く。
後ろ手でそれをいじると、どこかから漏れる月明かりがそれに…ポケットナイフの刃の部分に反射した。
柄の部分をぎゅっと握りなおす北斗の手に力が入る。
そんなことしたら、ナイフなんて持ってしまったら、北斗はまた…
「北斗！だめ！！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1241人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はぴ(プロフ) - 澪さん» ご指摘の点、修正いたしました。最後までお読みいただきありがとうございます！ (2019年10月27日 23時) (
レス) id: 30e2dc2cd0 (このIDを非表示/違反報告)
はぴ(プロフ) - あんずさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます...！お楽しみいただけて何よりです！ (2019年10月27日 23時) (レス) id: 30e2dc2cd0 (このIDを非表示/違反報告)
澪 - 完結おめでとうございます！すみません、あの次のお話にいくときに押すボタンのところがまだ続くになっていますよ 完結したので編集画面で執筆状態のところを完結にしてくださいね (2019年10月27日 22時) (レス) id: 1546ba87f7 (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - 完結おめでとうございます…！すごく惹き込まれるお話で、最近はこのお話の更新が1番楽しみでした！素敵なお話をありがとうございます。とっても楽しかったです！本当に、お疲れ様でした！ (2019年10月27日 22時) (レス) id: c8152cd10b (このIDを非表示/違反報告)
はぴ(プロフ) - ぽめり。さん» お読みいただきありがとうございます！本日で完結してしまいましたが、また今度お話を出すときに読んでいただけたら幸いです！ (2019年10月27日 21時) (レス) id: fcb0b50e70 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はぴ | 作成日時：2019年10月5日 23時
