ヒモの彼氏とヒモノの私

14 ページ14

「待って、さっきのやめてこっちのがいいわ」

「さっきのってこれ？」

「それじゃなくて、あのワンピース」

「えーワンピースでいいじゃん楽だし」

「お前の意見は聞いてねえ」



北斗を連れて買い物に出た土曜。
女の人のショッピングに連れ回される男の人は大体不機嫌になるっていうけど、北斗は真逆だった。
むしろ服にあんまり興味のない私のかわりに、あれこれととっかえひっかえしては試着室に私ごと押し込んで、着替えて出て来た私を見てはまたあれこれ考えている。



「ねえもういいじゃん、これにしようよ…」

「なんでお前が先に飽きてんだよ…ほらこれ、最後にすっから」



そう言われてまた試着室のカーテンが閉まる。
…え、これ上から下まで全部着替えないとじゃん。
最後だからって面倒な…



「…着たよ」

「あー…」



最後に北斗が薦めてくれた一式は、着てみると驚くほどにしっくりきた。
カーテンを開けた私をじっと見ていた北斗がふふっと笑う。



「いいじゃん、それにしなよ」

「北斗すごいね…」

「お前が服に頓着しなさすぎ」

「そんなこと…あるか」



ほら早く着替えろよ、ってまたカーテンを閉められる。
それにしても北斗ってすごい、家事が完璧なだけじゃなくてセンスまでよかったなんて。


顔も整ってるし、お洒落したらきっとモテるんだろうからもっとちゃんとした格好すればいいのに…

…



「北斗！」

「っうわびっくりした」

「ねえ、これ買ったら次北斗の服買いに行こ！」

「は？いや今日はお前の…」

「選んでくれたお礼！ちょっと待ってて、すぐ買ってくるから！」

15→←13

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す